『メディアの驕り』★★★★★③

メディアは事実を伝えているか?②
 (新潮新書) 著者の廣淵 升彦さんは、テレビ朝日ニューヨーク、ロンドン両支局長、報道制作部長、国際局国際セミナー専任局長などを歴任。その後、複数の私大で教授・講師を務める。ジャーナリストであった時代、外から日本のメディアを見ていて、また海外のそれと比べて、非常に違和感があったらしい。
『メディアの驕り』★★★★★③
 衆議院の解散が噂されて以降、テレビ朝日系・羽鳥モーニングショーでは、「解散の大義」がないと批判一色。戦後約20回解散している。特別なことではない。
『メディアの驕り』★★★★★③
 特に、テレビ朝日社員の玉川徹氏(画面右端)の偏向はひどい。
『メディアの驕り』★★★★★③
 朝日新聞17年9月20日一面。
 明示的であれそうでないにせよ、「9条に自衛隊」が、「解散の大義」であることは間違いない。朝日新聞は、かつて世界中を探して、中米の小国コスタリカ(人口500万人弱)を「平和主義」と持ち上げたことがあった。しかし、それはそれなりの特殊な理由がある。世界に約200カ国あるが、経済規模で世界3位の国の軍隊が「まま子」であっていいわけがない。自衛隊を憲法にキチンと位置付けるべきである。
 朝日新聞は、かつて満洲事変を煽り、戦後は北朝鮮・中国・ソ連を称揚するなど、ほとんど常に間違えてきた。
 慰安婦問題では、1982年9月から誤報に誤報を重ね、1989年8月には韓国の済州新聞は吉田清治の本を否定、1992年3月、歴史家の秦郁彦氏が済州島を現地調査、「慰安婦狩りはなかった」と発表。朝日自身も1997年にやっと記者を済州島に派遣し、そのような事実はなかったことを確認するも、うやむやにしてしまった。2014年8月になって、32年ぶりにようやく取り消した。極めて卑怯・卑劣な新聞社。福島瑞穂、高木健一、戸塚悦朗などの「ジンケン派」弁護士、吉見義明・中央大教授などと共に、虚偽により日韓関係を悪化させ、世界中に慰安婦像を建てさせ、誤解を広めた責任は、極めて重い。落とし前は全くついていない。
『メディアの驕り』★★★★★③
 コサギ、中サギ、アオサギ、ゴイサギなどが戻ってきた(本津川)。
『メディアの驕り』★★★★★③
 朝起きてすることは、庭の落ち葉掃きと蜘蛛の巣を払うこと。
『メディアの驕り』★★★★★③
 夕方帰ってくると、アゲハチョウ3羽がひらひらと出迎えてくれた。猫にマタタビ、アゲハにミカン科の木。本当に嬉しそうである。





つづきです。


 『メディアの驕り』★★★★★③


 ■民主党がまだ政権を握っていたころの話である。
 2012年2月のこと。イスラエルの副首相兼国防相エフード・バラク氏が来日した。
 このころの世界の最大の関心は、イスラエルがイランの核開発施設を攻撃するのではないか、ということだった。

 私自身も、親しいイスラエルの学者から「このままではイスラエル人はイランの核の恐怖に、脅えつづけなければならない。攻撃するのなら早いほうがいい」という言葉をじかに聞いた。

 そこへ行くと、日本人の危機意識の薄さはどうだろうか。北朝鮮が数次にわたり核実験を行い、ミサイルまで発射しているというのに、日本国民の大多数はこれに対する恐怖をあまり感じていない。

 日本政府を代表してバラク氏と会談したのは、玄葉光一郎外務大臣だった。玄葉氏は次のようにバラク氏に要請したという。
 「緊張をはらんだ軍事オプチョンは、イランに口実を与えるのみならず、アラブによる反イスラエルの団結を招くおそれがあり、イスラエルにとっても非常に危険なため慎重にしてほしい」と。

 なんとまた度胸(?)のある発言ではないか!もう何十年も前から、「アラブについて学びたければイスラエルに行け!」というのが、世界の常識である。

 イスラエルは日本人には想像もつかないようなインテリジェンス(情報収集・諜報)能力を駆使して、イランを研究しつくしている。そうしたインテリジェンスのかたまりのような国の要人に向かって、前記のような要請をするとは!まさに「中東音痴」そのものではないか?

 まず「イランを叩けば、アラブはイスラエルに怒りを抱く」という思い込みについて。イランのミサイルは、イスラエル、イラク、サウジアラビア、クウェート、UAEなどの、二千キロ圏内に届く。これらの国々は、イランがこのミサイルに搭載できる核兵器を完成した場合の脅威を強く感じている。

 だからこれらの国々は、イスラエルの攻撃により、イランの核の脅威が取り除かれれば、「一様に安堵する」。

 次はアラブ各国間の「団結」「連携」の実態について。
 エジプト、シリア、ヨルダンなどのアラブ諸国は過去に何度もイスラエルと戦争をしているが、1967年の「六日戦争」でも、73年の「十月六日戦争」でも、アラブは団結したことはないのである。

 そうした歴史の現実を踏まえないで、玄葉氏は「イランを叩けばアラブは団結する」と断言したのだ。

 この大失言からおよそ半年が経って、日本の領土を侵す事件が相次いで起こった。尖閣諸島近辺への中国艦船の侵入である。彼らの行動の背後に「これだけ阿保なことを言う外務大臣がいる日本は大したことはない」という侮りがあったことは否めない。正確な国際認識の欠如や失言は、大きな国難を招くのが常である。

 マスコミは依然として情緒的であり、外務官僚や学者の硬直した思考は続いている。世界を見る目を根本的に変え、日本独特の「癖」や「価値観」を変えないかぎり、危機は続いてゆくだろう。いい加減で宮本武蔵に剣の極意を説くような真似はやめてほしい。



 ■2015年に、SEALDs(シールズ)と名乗る大学生の一団が、マスコミに重宝がられた。彼らは安倍政権が推進する安保法案に反対であり、それゆえに一部のメディアから大事に扱われた。

 9月のある日、その代表3人が、日本外国特派員協会で記者会見した。彼らの頭の中にある「戦争と平和」というものが、地球的な広がりを持っていないことに気付いた。私は聞いた。
 「第二次世界大戦を引き起こす原因を作った最大の責任者はだれだと思うか?彼は演説が非常にうまく、ラジオを使って全国民の好戦ムードを掻き立てる天才だった」

 ドイツのアドルフ・ヒトラーだというくらいの知識は「常識」だろう。少なくとも日本政府の安保法案を批判し、それが戦争に繋がるという論を張るくらいの者にとっては、これは欠かせぬ知識のはずである。

 だが私の質問に対する彼らの答は、「知りません」だった。「ヒトラー」と答えたものは皆無であり、それを知らないことを恥ずかしいとも思っていなかった。こういう若者たちを英雄扱いにし、自社の主張を彼らに代弁させるメディアは、彼らが先の世界大戦について、最も基本的な知識さえ持っていないことを知らないのだ。



 ■リベラルという言葉を、日本ではいまだに「進歩的」のイメージで見ている人や、「好ましいこと」として捉えている人がいる。いまより60年以上も前のアメリカでは、この言葉は肯定的な響きを持っていた。だがいまでは、実現不可能な理想(というより幻想)を口にする人々、行政能力がないのに理念だけで国家や組織を動かせると信じている人々という、ネガティブな響きのほうが強いのである。彼らが政治の実権を握った場合、社会は大きな停滞に陥ることが多いのだ。

 こうしたリベラル信仰が、2008年および2012年の大統領選でバラク・オバマを後押しした。その結果、国際社会でのアメリカの影響力は格段に低下した。オバマは「イスラム国(IS)を殲滅する」などと、大衆受けする大見栄を切ったが、はかばかしい成果は挙げられぬまま、大統領としての任期を終えた。


 批判的な読者や視聴者の厳しい目を意識し、緊張感と謙虚さ、それになによりフェアな心を持って仕事に励むメディア人間は、健全な社会のためには不可欠なのである。

 日本が平和と自由を享受し、無事に生き延びるためには、国民がメディアに対してもっと賢くなり、煽動に惑わされないだけの判断力を身につけた層が拡大することが必要だ。


以上


『メディアの驕り』★★★★★②

メディアは事実を伝えているか?②
 (新潮新書) 廣淵 升彦さん著 842円 偏った日本のメディアに騙されないために有益な本です。ぜひお読みください。
メディアは事実を伝えているか?②
 讀賣新聞17年8月22日 意見広告
 1~2年関わった人(前川喜平氏)の証言に2時間33分(153分)を費やし、地域の発展のために10数年間獣医学部を誘致しようと奮闘(その間15回申請)してきた人(加戸守行氏)の証言はたった6分。原英史氏にいたっては2分半。新聞も全く同様。朝日新聞、毎日新聞、テレビ朝日、TBS、(NHKも?)などは、安倍内閣打倒の目的のため、平気でこういうことをやる。騙されるべからず!
『メディアの驕り』★★★★★②
 四国新聞17年9月17日
 四国の水がめ早明浦ダムの貯水率は危機的な36%台だった。
『メディアの驕り』★★★★★②
 台風18号の雨で香東川の潜水橋は通行禁止の状態に。恵みの雨(左奥の建物は国立香川高専)。
『メディアの驕り』★★★★★②
 ペットのヤモリが蛾を食べている図。台風以降、ペットの姿を見ていない。まさか、ヘビに食べられたのでは?
『メディアの驕り』★★★★★②
 アサガオと百日紅(さるすべり)。長い間楽しませてもらっている。





 『メディアの驕り』★★★★★②


 先日の続きです。


 ■2008年、民主党の大統領候補としての指名を受けるべく運動中のバラク・オバマは、かつての西ベルリンを訪れ、群衆に向かって演説した。これは明らかにケネディの真似であり、私は彼のパフォーマンスの中に、一種の詐術のにおいを感じた。しかし多くのアメリカ人は、一度ならず二度までも彼を大統領に選んだのである。

 2014年になって、オバマがケネディとは似ても似つかぬ人物であることを、アメリカ人および世界の人々は骨身にしみて悟った。「アメリカはもはや世界の警察官ではない」などと言わずもがなのことを言い、国際感覚のなさと優柔不断さを世界中に示した。

 ロシアのプーチン大統領がクリミアを併合するという、暴挙ともいえる行動に出たのは、オバマの弱さを見抜いていたからだ。「イスラム国」(IS)が台頭してきても、オバマはなんの手も打てなかった。

 ベルリンの壁を崩壊させたのも、冷戦を終わらせたのも、平和を願う人々の「祈り」ではなかった。冷厳なリアリズムに徹し、信念に支えられた者たちの意思と行動であった。

 日本を取り巻く国際環境がこれほど厳しくなった今でも、相変わらず自分たち好みの平和論を唱えている日本は本当に危ないと思う。理想主義や幻想に基づいて世界平和を語ることをやめよう。ありのままの現実を冷静に受け止める賢明さのみが平和をもたらす道なのである。



 ■マスコミ人間に特有の変なエリート意識は、社旗を立てた車が象徴するような精神風土だけが生み出したものではない。もっと深い原因がある。

 ずばりと言えば、それは「社会の木鐸(ぼくたく)意識」だ。新人記者たちは、上司や先輩から「諸君は社会の木鐸にならなければいけない」ということを徹底的に叩き込まれていた。素朴な大衆に正しい道を示すのが記者の役目だというのである。

 記者たる者は、ただ事実を伝えるだけでは足りない。大衆に対して「正しい道」を解き明かす使命があるというのが、マスコミ各社の精神的な「芯」の部分を占めているのである。

 だが、この意識はいまやまぎれもなく有害と化しつつある。使命感が昂じると、独善に陥り、自分の好みに合わせて報道する危険が増すものだ。

 ベテランの新聞記者で、テレビのニュースキャスターに起用された人たちは、ほぼ例外なしにニュースに自分の意見を入れたがる。自分はジャーナリストであり、ただ渡された原稿を読むだけのアナウンサーとは違う、と言いたいのだ。



 ■ドバイで経験した新鮮な驚きをご紹介したい。それは空港で見た「赤い三日月社」(赤新月社)の看板だった。この組織は、ほぼ世界中に広がった「赤十字社」のイスラム版ともいえる存在である。

 多くの日本人は、この赤い十字架が、キリスト教のシンボルマークだということすら気付いていない。だがイスラム文化圏では、このマークは使えないのである。

 中東のイスラム教徒(ムスリム)がキリスト教徒に対して抱く恨みつらみは、ここ百年や二百年のヨーロッパ人による支配なんかより、ずっとはるか昔に発している。ご存知「十字軍」による侵略である。


 日本の若い女性の間には、金銀の十字架のペンダントを身につけることを、「カッコイイ」と思っている人がかなりいる。しかし外国旅行の際にそうしたペンダントを身につけて出かけるのは考えものである。
 
 世界は10年前、20年前とは大きく変わっている。十字架を身につけてはいても、自分はキリスト教信仰などとは何の関係もないと心では思っていても、テロリストはそうは思わない。

 十字架ならまだ危険は少ないかもしれない。だが中には「カッコイイ」と思って「ダビデの星」(正三角形を2つ逆にくっつけたもの)のペンダントを身につけている女性もいる。それはムスリムたちが、キリスト教徒に対してよりももっと憎み軽蔑しているユダヤ人(ユダヤ教徒)たちのシンボルである。イスラエルの周囲の圧倒的に多くの国が、ダビデの星を仇敵と見なしているのだ。

 それにつけても思うのは、日本人の異文化・異教徒に対する警戒心・気配りの薄さである。


つづく


 

『メディアの驕り』★★★★★①

メディアは事実を伝えているか?②
 (新潮新書) 廣淵 升彦さん著
『メディアの驕り』★★★★★①
 いつも行くガソリンスタンドに置いていた。ホンダモンキーより小さい。目がかわいい。
『メディアの驕り』★★★★★①
 このバイクでのレースがあるという。
『メディアの驕り』★★★★★①
 台風18号がくるというので久しぶりに雨戸を閉めた。ヤモリがいると思っていたら、小さなヘビがいた。ヤマカガシ?まさか私のペット(ヤモリ)を食べていないだろうね?
『メディアの驕り』★★★★★①
 いつも行っている喫茶店が台風で臨時休業していたため、別の店に行った。そこのテーブルにあった花。
 私も経験があるが、台風直撃のとき店をどうするかが悩ましい。今回で言えば、16日(前日)19時ごろの台風情報より実際は3時間ほど遅れ、進路は南にとった。高松市最接近は21時ごろ。スタッフの問題があるため昨夜のうちに休業に決めたのだろうが、結果的には今日の18時ごろまで営業は可能であった。





 『メディアの驕り』★★★★★①


 『メディアの驕り』は大変タイムリーでいい本である。いくつかを抜粋(一部編集)してご紹介したい。
 本当は他にもいい話(特に海外の話)が多いのだが、ブログという性格上長い話は載せられない。是非本を読んでください。


.......... ..........


 ■マスコミは、好きか嫌いかで人間を分類する。人間だけではない。思想や理念まで、自分たちの好みに合わせて報道する。

 諸外国では文句なしに「プラス」とされていることを、日本のメディアは「マイナス」と伝える。逆に圧倒的に多くの国や地域で「マイナス」とされている価値や服装や習慣を「プラス」と伝えている場合が多い。

 かつて日本に水玉のネクタイが大好きな総理大臣がいた。この人が首相として登場した時、マスコミはいっせいに氏の政治家としての「清潔さ」を称えた。そして彼の水玉のネクタイを「クリーンな人柄を象徴する」ものと持ち上げた。
 海部俊樹さんである。「海部さん好きなら水玉まで好き」ということになった。

 間もなく海部氏の力量が試される大事件が起きた。1990年8月、イラクのサダム・フセイン大統領が、隣国のクウェートに軍隊を送り込んだのだ。サダムはあっという間にこの産油国を併合すると発表した。

 このニュースをどう思うか、と取り囲んだ記者団に聞かれた海部総理は、「うーん」としばらく絶句したあとで、「でも日本には大したことはないんだろ?」と逆に聞き返した。

 一つの主権国家が、白昼衆人環視の中で他国に乗っ取られたのだ。この暴挙を国際社会が見逃すわけがない。

 この失言は海部氏にとって致命的だった。一国の宰相としての能力がないことが次第に明らかになり、やがてさらに決定的な失言を重ねたことで、首相の座を降りなければならなくなった。

 私が最も憂慮したのは、水玉のタイをクリーンな人柄の象徴として、まるで申し合わせたように持上げた日本のマスコミのあり方だった。



 ■1980年代の半ばから終わりにかけて、日本は好景気に沸いていた。土地も株も空前の高値をつけていた。円の対外価値は力強く上昇した。

 だがこうした状況を面白くないと感じる人々がいた。これを行き過ぎと見、さらには不健全と見る勢力だった。
 主勢力はマスコミの内部にいた。彼らは高騰する地価を見て、「なにがなんでもこのバブルをつぶさなければならない」と思い込んだ。

 「持つ者と持たざる者」という図式は、大衆の支持を得やすい。人々はメディアに煽られて、昔風の道学者先生みたいな気持ちに駆り立てられていった。「清貧の思想」などという本が売れた。

 政治家たちはおびえた。このままでは世論を敵にまわし、自民党は政権を失うと思ったのだ。87年の総裁選びの際、外国人記者クラブでの三者共同記者会見で、有力候補の一人が「とにかく地価はなんとしてでも下げなければいけません」と明言した。

 おそろしい発言だった。このころ土地や家屋を買ったのは、投機家ばかりではない。なけなしの金をはたき、ローンを組んで住宅を手に入れた善良な庶民も多数いた。

 しかし世論におもねった政治家と官僚は、あらゆる政策手段を動員して、地価の下落をはかった。大蔵省は不動産に対する「融資の総量規制」を発動した。自治体は民間の不動産取引をいちいち届け出させるようにした。マスコミは三重野康日銀総裁を「バブル退治の旗手」と持ち上げ「平成の鬼平」とはやした。

 かくて株価も地価も暴落につぐ暴落をつづけた。

 その後20年以上も続いた大不況は、ほぼ全面的に株価と地価を下げさせた官製不況、いわゆる「資産デフレ」に発している。
 しかも政府もマスコミも、つい最近まで資産デフレの恐怖に気付いていなかった。

 不況は大方の予想をはるかに超えて長く続いた。その間に借金が返せず、事業に行き詰まり、人生に絶望して自殺した人は、年間に3万人を越えている。
 よほど利口に立ち回った人々を除いて、日本人の多くは20年前にくらべてずいぶん貧しくなった。

 いつの世にも国民の幸せ・国家の繁栄よりも、自説の正統性の方が大事と考えている輩がいる。最も多く彼らが巣食っている場所は、マスコミ内部と大学である。彼らの説がどんなに間違っていても、いまの制度の下では彼らの振りまく迷妄を阻止できない。



 ■1983年8月アメリカから帰国して、次のフィリピン大統領選挙でマルコスに戦いを挑もうとしたベニグノ・アキノ上院議員が、マニラ空港に降り立ったとたんに背後から銃撃され死亡した。この一部始終をタラップの上からテレビカメラが撮影していた。世界中に配信されたこの映像は、人々を憤激させた。

 1986年、アキノ夫人のコラソン・アキノ(コリー)は、亡き夫の遺志を継いで、大統領選挙に立候補した。

 大統領に就任したコラソン・アキノは、華々しく外交活動を展開した。富裕な階層の出身で、洗練されたマナーと教養を身につけ、アメリカ東部の知識階級の英語を話し、かなりの美貌の持ち主であった彼女は、各国のマスコミや政府から大事にされた。

 しかし、コリー・アキノは、大組織を動かす術も知らず、国の運命を左右する外交の舞台で生きていくだけの知恵も能力も備えていないというのが私の診断だった。

 懸念は的中した。彼女はフィリピン経済を立て直せず、行政能力のなさを露呈し、民衆の支持を失ったまま退陣した。

 しかし、彼女の判断ミスは、この程度ではおさまらなかった。国の安全の根本にかかわる米運基地問題で、彼女は大きな判断ミスを犯した。大統領としての任期が残り少なったころ、フィリピン国内では「米軍基地はもう要らない」「アメリカに引き上げてもらおう」というムードがたかまっていた。

 最高指導者というのは、大衆に迎合してはいけないのである。米軍が自国内にいることのメリットと、いなくなった場合にどれほどのマイナスが生じるかを、忍耐強く大衆に説いて聞かせるのがトップの役目というものだろう。

 しかし、フィリピンはアメリカに対して、「1年以内に撤退せよ」と通告した。
 かくて米軍はフィリピンから撤退した。いま中国海軍は南シナ海を我がもの顔にに動きまわり、岩にすぎないものを島だと言い張って軍用機の滑走路を建設している。

 国のトップに立つ者は、国民感情をはるかに越える見識と外交哲学を持っていなければならないのである。時には世論の反対側にこそ、国の安全を守るべき道が隠されているものだ。



 ■日本人のほとんどが「これは絶対に正しい」と思い込んでいる価値観がいくつかある。「庶民的というのはよいことだ」という考え方はその代表的なものだ。

 土井たか子氏が社会党の委員長に就任して間もなくのころ、「ラーメンが好きだ」と発言したことがあった。マスコミは大々的にこの発言を取り上げた。庶民=善、ラーメン好き=庶民的、故に土井たか子=善、社会党=庶民の味方=善という、きわめて単純な等式が日本の大衆の間に広く深く浸透していった。

 当たり前の話だが、ラーメン好きなことと国民が幸せに暮らせるための政治的見識や力量との間には何の関係もない。土井氏は経済についても外交についても、安全保障の根幹についても、日本の利益になるような哲学はお持ちではなかった。「北朝鮮は日本人を拉致などしていない」と言い切ったのもその一例だった。

 1991年、湾岸戦争が今にも始まりそうな矢先に、バクダッドまで出かけてゆき、イラクのサダム・フセイン大統領に直談判をして、戦争が起きるのを防ごうとしたことも、大きなマイナスだった。「そんな説得で戦争が避けられるわけがない。なんでもかでも『話し合い』で解決できると思い込む日本人の悪い癖だ」というのが、世界の良識派の一般的な見方だった。


つづく


『潮流』久々に淫してしまった

『潮流』久々に淫してしまった
 今野 敏(こんの・びん)さん、久々の東京湾臨海署安積(あずみ)班シリーズ。★★★★★(ハルキ文庫)680円
『潮流』久々に淫してしまった
 近所で咲いている花
『潮流』久々に淫してしまった
 庭に咲いている花。近々図鑑で調べてみよう。




 『潮流』★★★★★ 久々に淫してしまった


 今野 敏(こんの・びん)さんの東京湾臨海署安積(あずみ)班シリーズ『潮流』に久しぶりに淫してしまった。

 他の事をしなければならないのに、読みだしたら止められなくなって、3時間半ほど費やしてしまった。サラリーマン時代は、仕事に差し支えるので、年末年始の休み以外は、小説やテレビの連続ドラマは禁止していた。久々に淫してしまった。面白かった。

 この本は、安積がかつて扱った事件が冤罪だったかどうかが大きなテーマとなっている。私も10年ほど前までは冤罪事件に強い関心を持ち、そのことについて書き、明らかに冤罪と思われる人たちを支援したりもした。

 この本にも書いているが、検察官・警察官は、自分たちが描いた筋書きに都合のいい証拠や証言を選び、都合の悪いものはなるべく隠す。そして、一旦起訴されたら、刑事裁判の有罪率は99・9%である。検察官の中には、裁判官を自動販売機と呼び、自分たちの筆先三寸でどうにでもなると豪語する者もいる。

 ところが、郵政不正事件で厚労省の村木厚子さんを標的にした検察は、都合の悪い取り調べメモを破棄したり、証拠を偽造したことが満天下に明らかになり、世間の検察・警察を見る目は変わり、少しは流れが変わってきだした

 とにかく面白い。お薦めします。


 以下、この本のストーリーと直接関係のないことを書きます。この本の3分の2ほどのところにこうある。

 「警察は、法的に厳しい反面、肉体的なぶつかり合いにやや寛容な一面がある。警察官のほとんどが武道の経験者であり、あまりほめられたことではないが、先輩が後輩に手を挙げることもある」
 「凶悪でしたたかな犯罪者に対しては、やむを得ず肉体的な実力行使が必要なこともある。言葉の印象は悪いが、警察も社会学用語で言う『暴力装置』であることは確かなのだ」


 サラリーマン時代のある経験を思い出した。
 私はある営業所の内野責任者であった。ある日、明らかに武道経験者と思われる屈強な男4人がやってきて、「北方領土返還」に賛意を示す文書への署名と賛助金を求められた。

 私は別室から警察署に電話して助言を求めた。その時の刑事の言葉が面白かった。「一発殴られてやってください。電話いただいたらすぐに出動して引っ張りますから」。

 私は「成るほど、そんなものか」と刑事の発想に感心し、女子社員にその旨伝えて、4人に対応した。「北方領土返還」に賛意を示すことは特に問題がないので署名し、賛助金はなんのかんのと理由をつけて断った。別に問題は起こらなかった。


 関西のある営業所に所長として転勤した人は、商品のクレームで事務所に呼び出され、話の最中に応接机の上にゴトリと何か置かれたので見ると、回転式拳銃(リボルバー)だったとのこと。
 長い人生いろいろあります。


以上



『君たちに明日はない』★★★★★

『君たちに明日はない』★★★★★
 『君たちに明日はない』シリーズの4と5(新潮文庫)。 594円と637円。
『君たちに明日はない』★★★★★
 通販はいいけど、段ボール箱の片付けが面倒。
『君たちに明日はない』★★★★★
 たぶんアヤメ。田んぼ脇で咲いていた。





 『君たちに明日はない』★★★★★


 垣根涼介(かきね・りょうすけ)さんの『君たちに明日はない』シリーズの4と5を続けて読んだ。12年前に第1巻が出て、2年ごとに続編が出版され、5巻で完結した。

 主人公の村上真介は、リストラ請負会社の面接官。私が会社を辞めて17年になるが、その少し前、1998年頃から私がいた会社もこのような会社を利用しだした。私自身は、この作品のように、個別面接は受けたことはない。早期退職年齢対象者全員を会議室に集めて、早期退職優遇制度の話を聞いただけである。私が辞めたのち頃から、個別にぎゅうぎゅうとやったようである。

 因みに、面接官は辞めさせるだけが能ではない。人事評価は、例えばS,A,B,C,Dなどの5段階評価が普通で、構成比は、5%、20%、50%、20%、5%などとなっている。削減目標が対象社員の2割の場合、D評価、C評価の人に辞めてもらい、SやA評価の人には残って活躍してもらうのがベストである。ところが往々にして、そううまくはいかない。SやAの人はどこにいってもある程度やれる自信があるのでこれを機会に割増し退職金をもらって辞めようとし、DやCの人はあくまでもしがみつこうとしがちである。


 私はこの作品を1巻目からすべて読んだ。リアルである。また、例えば、4巻目は、航空会社のAJA、証券会社の山三、楽器会社のハヤマ、ファミレスのベニーズを扱っているが、それぞれJAL、山一、ヤマハ、デニーズであると思われる。5巻目の化粧品会社コフレはカネボウか、家電会社セネシュはシャープ?公文書店は分からない。最後は村上真介自身の会社、リストラ請負業の日本ヒューマンリアクトである。

 日本ヒューマンリアクトは、社長の高橋が立ち上げて15年になるが、この種の会社の社会的な意義がそろそろなくなると考えて、余裕のあるうちに畳むことを社員に提案、余剰金三億円は社員に退職金として分配して廃業した。

 モデルとなった職種、個別企業の状況、その業界の現況がよく分かる。仕事とは何かについても考えさせられる。ほとんどの人が、40年~50年間、人生の大半を仕事に費やさざるを得ない。それだけに重い。


 著者の垣根涼介さんは、第5巻目の「あとがき」にこう書いている。

 「一話ぶんの話を作るために実際にその業界にいる人々に取材し、その取材を小説として起こす度に、自分の中に何事かの発見があり、それによって私の仕事観や社会観もまた変容していく……。十数年間ずっと『仕事とは何か?』を考え続けてきた意味は、今後の私にとっても大きな指針になると思っています」

 「ですが、そうやって色々と考えてきた仕事観や社会観も、結局は現時点での暫定(ざんてい)仕様でしかないのだろうと感じています。社会や人間関係が次のフェイズに行けば、これまでの考え方や方法論が通用しなくなってまた自分をリストラ(再構築)していかなくてはならない……それが、生きていくということなのでしょう」


 お薦め致します。


以上


プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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