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「県庁おもてなし課」 ★★★★☆

「県庁おもてなし課」
 
「県庁おもてなし課」 有川 浩さん (角川書店) 1680円

 
 いきつけの本屋さんで、書店員さんに「何かおもしろい本ない?」と聞いて薦められたのがこの本。本当に面白かった。また、タメになる本でもある。

 いまや地方は、ほとんどのところが少子高齢化・人口減少・金欠病で、「観光」に何とか活路をみいだそうとあがいている。「地方を元気にしたい!!」という思いで作られた本である。

 有川さんが、すべての〝いなか〟にエールを送りたいと思って書いたこの本の印税すべてを、東日本大震災に寄付するとのこと。売れてほしい。

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 この本の主人公は、高知県庁観光部おもてなし課の掛水 史貴(かけみず ふみたか:25歳)。

 以下、面白かった部分、「なるほど!」「そうそう!」と思った部分をランダムに取り上げる。

・高知出身の作家 吉門 喬介(よしかど きょうすけ)
  「(観光特使制度について)県民の皆様の率直な意見ってやつ、聞きたい?」
 「何を狙いゆうかさっぱり分からん。観光客を呼ぶには効率が悪いがやなか。県庁が内輪受けで自己満足しゆうだけとしか思えん」

 (『民間』の人間は特使制度の話を聞いて即座に「効率が悪い」「県庁の自己満足」と判定できる感覚がある。
 それが『民間感覚』だ。―『要するにコストの問題』などという単純なことではなかった。『民間』の意識はもっとずっと複合的に先を行っている)

・掛水
 「私どもは県庁の人間です。……『民間感覚』を一朝一夕に持つことはできません。―こんな情けない『おもてなし課』が、有名無実にならずに済むご助言を何とかいただけないでしょうか」

・吉門
 「課に一人、外部の人間をスタッフとして入れろ」
 「まず公務員じゃないのが絶対条件。そんでフットワークが軽くて、学歴なくてもいいから気がきく奴。むしろ変にプライドとかない奴のほうがいい。そしてできれば若い女」
 「そんで、そのスタッフの意見はどんな細かいことでも絶対軽視しないこと」


・吉門
 「行政は変化を嫌う。特に地方は保守的だ。現状を維持できたらいいって感覚のままじわじわジリ貧になっていることに気づかない。気がついたら財政破綻してるって寸法だ。……高齢化は驀進中、若者は職がなくて四苦八苦、進学や何かで一度県外に出たらUターン就職もままならない」
 
 「そして県にはこれといって打つ手がない。……何となくこのままじゃまずいなと思いながら、公務員という保証された身分で会議を躍らせてるだけじゃないのかって……」
 
 「観光にしろ商業にしろ、成功してる都市は変化を恐れてないんだよ。西日本なら例えば神戸。福岡。……クローズアップされるのは成功例ばかりだけど、失敗だってたくさんしてる。けどそこで守りに入らない」


・吉門
 「第一次産業と観光が頼みやのに、その観光が巧くプロデュースできてない。地域ごとではいろんな取り組みをしょっても、それを全国発信できてない。観光立県になるには県の力が要るがよや。けんどその県にセンスがない。組織にも弾力性がない。地域の発想をまとめ上げて県を『商品』としてPRすることを分かってない」


・おもてなし課アルバイト 明神 多紀
 「トイレがキレイでした。水洗で洋式も和式もあったし」
 「だって大事ですよ。どればあ立派な施設でも、トイレが汚かったらそれだけで興醒めやし」

・吉門の妹 佐和
 「……水回りで失格したら、絶対に女性のお客さんはリピーターになってくれんき。チャック下ろして引っ張り出すだけの男と一緒にせんといて」

・多紀
 「そうですよ、女は絶対パンツ下ろしてしゃがんだり座ったりせんといかんがですよ」


・佐和
 「産直らぁてお金が欲しくて出品するわけじゃないわえ」
 「やり甲斐の問題やきバザーみたいなもんよ。……物が売れるのは一番分かりやすい評価やき。自分の作った物が直接お客さんに選ばれてお金になるのは、値段が安くてもすごく嬉しいもんやきね。業者に卸してお金にするのとは訳が違うわ。やき、おばちゃんやおばあちゃんは産直の出品にはまるがよ」


(公務員であれば住民訴訟の恐ろしさは身に染みている。行政ではなく、行政内の個人に対して訴訟を起こせる現在のシステムでは、失敗した行政プロジェクトの賠償責任を個人に求めることが可能だ。自治体の長が数億の損害賠償を命じられるような判例も出ている)


(頭が固い、融通が利かない、だからお役所は。―だが、そのような行政であることを彼らは義務づけられてきたのだ。求められたのは創造性や柔軟性よりも硬直性だ)

・観光コンサルタント 清遠 和政(きよとう かずまさ)
 「萎縮せざるを得んがよな、あの人らぁは」
 「萎縮させゆうがは俺らぁや」
 「自治体というもんは効率よりも公に言い訳が立つことを優先せなぁいかん組織よ」


・吉門
 「キャッチコピーが巧くはまった本は跳ねる」
 「キャッチコピーがはまってるってことは、その商品のセールスポイントを的確に把握してるってことだろ?セールスポイントを自覚してる商品としてない商品とじゃ商品力が雲泥の差だ」
 
 「結局、物を売るノウハウの根っこはどんな分野も共通なんだよ。巧く摑めるキャッチコピーが作れたらその企画は八割勝ってる」


「新幹線はない。
 地下鉄はない。
 モノレールも走ってない。
  ・
  ・
  ・
  ・
 地下街はない。
 温泉街もない。
 
 金もない。

 …けんど、

   光はある!」

・吉門
 「空白の使い方が巧い」
 「限られた紙面で資料を作ろうとすると、情報の詰め込みに走りがちなんですよ。空いた隙間がもったいないってついあれこれ詰め込みたくなる。だけど、そうやって緻密にしちゃった画面は読む側にとって単なる黒っぽい模様になっちゃう。目を通す気が起こらない。読ませようとするなら、実は空白の処理が重要なんです」


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作者:有川 浩(ありかわ ひろ ♀)
 
「小説の効能ってそういうところにあると思うんです。地方観光のマーケティングについて勉強しようと思ったら、資料を読まなきゃいけないとか専門知識を覚えなきゃいけないとか、いろいろハードルが高い。けど物語としてそれを読んだら、『あ、こういうことなのか』と勉強するつもりもなしに分かる。あくまでも面白いお話として読んでもらったうえで、現実に生かしていただける情報や気づきを入れ込みたいなというのは、小説を書く時に常に思っていることなんです」

 「私の場合、小説を書いて、それを本の形に作って読者に届けているという関係上、自然とお客様視線になっちゃうんですよね。本を売るのも、観光を売るのも、お客さんを相手にするという点では一緒。……『お客様の視点に立つ』という、ものすごく簡単な答えなんだけれども、そのたった一つの答えに、なぜかみんな辿り着けないみたいですね」

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 小説家というのは本当にすごい。いや、すごいのは小説家というより有川 浩さんか。全国の行政パーソン、サービス業に携わる人必読の本。勿論、その他の人にも。
 
 高知に行きたくなった。数年前から長宗我部に興味があるので高知県立歴史民俗資料館と馬路村、日曜市に行ってみようと思う。


 ダ・ヴィンチ book of the year 2011 第1位。
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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