FC2ブログ

「私はもう逃げない」 ★★★★★

「私はもう逃げない」

 「私はもう逃げない」 島田律子さん (講談社文庫) 650円

 副題は「自閉症の弟から教えられたこと


 島田律子さんと聞いて、現在35歳以上の人の2~3割は知っているのではないか。17年続いて今春打ち切りとなった明石家さんまさん司会の「恋のから騒ぎ」(日テレ系)初期のスターである。

 元JAL国際線スチュワーデスのスレンダーでひょうきんな美人である。あのバブリーで何の悩みもなさそうに見えた「りっちゃん」の内実がこうであったとは人は外見からだけでは分からないものである。

 律子さんの三つ違いの弟力郎(りきお)さんは、自閉症である。目線が合わず、言葉はオウム返しで、突然パニックを起こす。その反面、大昔からのカレンダーを全て記憶しているなどの特技がある(まさにダスティン・ホフマン演じる「レインマン」そっくり)。

 自閉症は、先天性の脳機能障害。症状は様々であるらしいが、主な特徴は、①限定された興味やこだわりをもつ②対人関係でのコミニュケーション能力の欠如③言葉の発達の遅れ、があげられるという。

 律子さんは、ずっと「伝えなければいけないことがある」と思いつづけてきたという。

 「私は、幸か不幸かこのような家族の一員として生まれ、無知だった幼少期、そして多感な青春期を、力郎と共に過ごしてきた。自閉症とはいったいどのようなものなのか自閉症者がいる家族は、どのようなことに巻き込まれていくのか姉である私は、どのように魂を揺さぶられてきたのか。そんな島田家の、この三十年の歴史を書くことにより、少しでも力郎のような障害を持つ者のいる家族へのエールになれば……また、自閉症を少しでも理解するきっかけになってもらえば……。そうすれば、障害を持つ者がもっともっと生活しやすくなる世の中に、近づけるのではないだろうか」

 力郎さんは、二歳の時自閉症と診断された。律子さんは、その時、お祖母さんの言った言葉に長い間しばられることになる。「律子は女の子なのに、こんな障害者が弟にいたら、もうお嫁に行けないねぇ。本当に可哀想だ……

 すごいのは、ご両親たち。力郎さんと律子さんの将来のことを考え、「千葉県自閉症児者親の会連合会」に参加し、自分の子供たちの入る施設を自分たちで作ることにした。
 
 同じ境遇にある親たちは、施設の設置と経営を目的とする「菜の花会」を結成。親たちの地を這うような戦いが始まった。

 努力の甲斐あって、あと一歩まできたところで、一片の厚生省通知により、夢は砕け散るかと思われた。しかし、神様のような地主さんに助けられ、「菜の花会」が発足してから五年後に、自閉症者の専門施設「しもふさ学園」が開園した。

 
 
 この文庫本が素晴らしいのは、「島田家のその後 文庫版のやや長いあとがきとして」が、付け加えられたことである。

  幼少期にお祖母さんに言われた「こんな弟がいたらもうお嫁には行けないねぇ」という言葉に対する答えが出ている。

 律子さんは35歳で結婚した

 律子さんは、大変緊張しながら最初にご主人の実家を訪れた時、先方のお父様のやさしい言葉に号泣してしまった。

 結婚式の食事会では、お母様が「こんな日が来るとは思ってもみませんでしたー!」と、おたけびを上げながら泣き崩れた。

 (勝手な推測ではあるが、律子さんは、35歳までに好きな人との結婚を何度か諦めたことがあるに違いない。何回読んでも、涙、涙、涙……である)

 
 律子さんは、その後男の子を出産し、力郎さんはおじさんとなった。

 「しもふさ学園」は、たくさんの人に支えられ、立派な施設に成長している。

 力郎さんは、施設で建築資材を組み立てる作業をし、自立訓練棟で生活をしながら、自分の人生をしっかりと歩んでいる。

 
 解説及び文庫版解説は、東大病院で力郎さんを自閉症と診断した佐々木正美さん(現川崎医療福祉大学特任教授)が書いている。
  自閉症の専門医、自閉症児者を抱える家族をよく知る人の、味わい深い文章である。

 
 できるだけたくさんの人に読んでもらいたい本である。
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

最新記事
カレンダー
04 | 2011/05 | 06
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カウンター