「世界屠畜紀行」 ★★★★★

「世界屠畜紀行」

 「世界屠畜紀行」 内澤旬子さん (解放出版社) 2310円


 先日、本屋さんで「やったあ!」と小さく叫んでしまった。私にとって本屋はワンダーランド。
 上記の本が文庫になって出ているではないか(角川文庫・900円)。以前から大変気になっていた本である。
 
 とにかく、知らなかったことが頭から尻尾までいっぱい詰まった本である。著者のイラスト付き。

・私は街の真ん中の商店街で育ったため、自然のこと、農村・漁村等の慣習などを知らず、そのことにコンプレックスがある。何かことがあれば、一番サバイブできそうにない人間であり、この種のことに憧れがある。

・「部落問題」というのがあるのを知ったのが高校二年生の国語の時間(島崎藤村だったか?)。大学が京都で、大学も部落問題に熱心で1回生のときにその種の本を何冊か読んだが、よく分からなかった。アルバイトで部落出身の人と何人もつき合ったが、なぜ差別するのかいまもって皮膚感覚でよく分からず、ずっと宿題になっている(内澤さんも私の感覚に近いように思う。世界中で聞きまわっている)。

・内澤さんが何年もかかって自腹で世界中の屠畜現場を駆け回って調べたことを書いている。途中乳がんと闘いつつ、何としてもこんなに面白いことを世の中の人に伝えたい、この本さえ出すことができればもういいや、と思って書いた本(ありがたいことに、その後元気になり、続編を準備中とのこと)。

・日本は20年近い停滞の中にあるが、そうはいいつつ、過去の豊かさを糧に、いろいろな才能、経験のある面白い人が出てきている。特に女性に多いように思う。内澤さんもその1人。

・できれば、この本を英語で出版できないかと思う。クジラ問題で過激な活動をする人に読んでもらいたい。世界は多様である。私自身は犬や猫を食べたいとは思わないが、それらを食べる人を奇異には思わない。そういう文化があることは理解できる。ましてや暴力を使ってまで阻止しようとは思わない。

 現代の日本人は、魚はともかく、肉といえば、白いプラスチックトレーに並べられラップされたもの、焼き肉、牛丼、ステーキなどしか思いつかない。それはたいへんおかしいこと。全国の中学生(義務教育中)に読んでもらいたい。

 いろいろ理屈は並べたが、要は面白い。読んだあと、心が豊かになる本である。


.......................................................................................................

(追記…11年7月16日)

 西澤旬子さんの「身体のいいなり」(朝日新聞出版)が、第27回講談社エッセイ賞に選ばれました。

 
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

最新記事
カレンダー
05 | 2011/06 | 07
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カウンター