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「日本を救う道」 ★★★★☆

日本を救う道

 「緊急提言 日本を救う道」 堺屋太一編著 (日経プレミアムシリーズ) 893円の内、

 第3章 日本の産業―こう戦う 柳川範之准教授(東京大学大学院)をご紹介します。


 (本文抜粋)

 ―小回りがきかない日本にした3つの理由 

(堺屋) 
 日本の産業力の低下のいちばんの問題点は?

(柳川) 
 「小回りがきかない体制」というのが1つのポイント。
 いまの日本のポジションでは、目指すべきターゲットがありません。さまざまな分野で新しいチャレンジができる経済システムや企業の体制を構築しなければいけなかったのですが、それができませんでした。もっと方向転換が自由にできる、より小回りがきく体制にする必要があった。

 もう1つ小回りがきく必要があった理由は、ITの急速な進展にあります。ITの進化によって、そのほかの産業も構造変化のスピードが昔と比べてずいぶん速くなって、日本を取り巻く経済環境を大きく変えました。

 なぜ小回りがきかなくなっているのか。3点。

 1つは、雇用の問題。雇用の維持・確保という点から、経営戦略がそれに引っ張られてしまう。

 2点目は、優良企業の規模が大きくなりすぎた。

 3点目は、ある種の制度や法律の問題。日本では、「過去につくられた法律は間違っていない」……という意識が非常に強く、……ルールを変えられないという問題があります。


 ―法律や規制の「縛り」は日本全体の問題

(堺屋)
 日本とロシアは基準主義。アメリカやフランスは確立論。10億分の1でもリスクがあるなら必ずダメージコントロールを訓練し、バックアップ・システムは準備しておく。

 今回の日本の原発事故は「想定外」。基準をつくるときに考えていない事故が起こったから、たちまち大惨事になってしまった。

(柳川)
 規制でも、法律でも、……そういう縛りがあるというのは、……日本のかなり全体にかかわっている問題。


 ―新しい企業の登場が経済全体をスリム化する

(柳川)
 世界的に見ても企業が大きくなりすぎると、うまくいかないという構造はある。……いまある企業がどれだけスリム化できるかという課題の一方で、ベンチャーなど新しい企業、新しくスタートする小さな企業がどれだけ登場するかが重要。


 ―ベンチャー起業の人生リスクが高すぎる

(堺屋)
 日本の起業率が非常に低くて、いまは3%少々。その上起業者の高年齢化が進んでいます。

(柳川)
 大事なことが2つある。1つは起業を増やすためには、廃業を増やさないといけません。もう1つは、大企業にずっと勤めることが安心だという仕組みを改め、その認識も改めて、再就職や企業の統廃合がもっと活発に行われるようにしないといけません。


 ―大企業の正規社員の既得権と会社組織の動脈硬化

(柳川)
 大企業の仕組みがぎちぎちに固まりすぎていて、終身雇用の正規社員の既得権のようなものになっています。会社の構造変化を拒む仕組みができあがっているため、会社組織のいろいろなところで目詰まりを起こしている。

 アメリカ企業などを見ていると、正規社員でも割と簡単に解雇しますので、……ドラスティックに会社を変えやすい。


 ―世界で勝負する日本の産業の武器

(柳川)
 日本の強みというのは、ある種のきめの細かさとか、サービス業的な製造などにある。規格大量生産ではなくて、製造であっても特色ある製造、ある種のサービスが付加されたような製造ということになってくる。
 どれだけ付加価値をつけて儲けられるか……。つくるだけでなく、マネジメントとセールスの能力という点には工夫の余地があります。


 ―震災後も日本は優位性を守れるのか

(柳川)2つに分けて議論。
 1つは、今回の震災の影響については、……タイムスパンの問題が関係しています。どれだけ早く復旧できるかが、日本の産業が復活していく上では大きなポイントになる。

 2点目は、……中長期的な課題。「特色のあるものをつくっているから大丈夫だ」と思っていたら、ライバルも同じようなものをつくれるようになり、あっという間に大量生産できるようになってしまう―このような流れは避けられません。
 現実の製造や開発というのは、そういう流れの繰り返し。


 ―幻想としての終身雇用制で組み立てられた社会

(堺屋)
 アメリカのダウ工業株30種平均で、1896年に指標ができた当初からずっと採用されているのはGEだけ。そのGEの社内では100年前にやっていた事業で今残っているのは1つもない。アメリカ企業は、そういう内部転換をかなり大胆に実行しますね。

(柳川)
 日本は、ショックをショックとしてきちんと見せず、これまで景気対策の名の下に、衰退している産業、あるいは本来であれば生き残れない企業が生き残ってしまった、という面があります。産業の転換を図るには、だめなものはだめだと割り切れるようにしなければなりません。

(堺屋)
 従業員と雇用の問題に帰結しますね。会社が変わろうとしても、なかなか社員を入れ替えられない。

(柳川)
 私は、「終身雇用は幻想だ」というレポートを書きました。本当の意味で終身雇用が実現できている人は相当少ない。大企業の男子正社員だけ。

 歴史的に見ても、終身雇用の仕組みで人生をまっとうできたのは、ごく一部の世代だけ。終身雇用という仕組みができたのは戦後です。バブルが崩壊すると、終身雇用を維持するのはもう無理だ、と言われるようになりました。

 世の中全体として終身雇用は実現していないのに、社会の目標、社会全体の制度の枠組みは終身雇用を前提にしてしまっている。そこに大きな問題があります。
 そもそも終身雇用が破綻をきたしているのですから、社会の仕組みを大きく変えなければいけません。

(堺屋)
 何より重要な問題は公務員。これが徹底した終身雇用、年功賃金をやっています。

(柳川)
 終身雇用は止めるべきです。はるかに小回りがきくようになりますし、いろいろなことが自由にできるようになりますね。


 ―社会で再チャレンジできるトランポリン型のセーフティネット

(堺屋)
 途中ではみ出した人がどうやって暮らすかという問題が起こってきますね。

(柳川)
 はい、……私は、トランポリン型のセーフティネットが必要だと思っています。単に落ちないだけではなく、もとに戻す力を与えてくれるセーフティネット。

 もはや20歳で身につけた知識で40年も食べていける時代ではありません。新しい産業に必要な知識を、人生の途中でもう一度身につけるということをしていかないと、だれもが対応できなくなってしまいます。


 ―震災復興は資金もアイデアも民間の力を活かす

(柳川)
 4月13日の日経新聞経済教室で、私は、復興は民間の資金と知恵を活用せよ、と書きました。
 1つは、……民間資金が入れば政府支出が少なくてすみます。
 もう1つは、資金だけではなく、民間の知恵が入ることが重要です。

 国債にしろ、税にしろ、国を通してお金が流れると、結局官僚主導になってしまって、官僚の後ろについているいろいろな既存の人たちがそのままお金を使うということになる。それでは新しいイノベーションが期待できなくなってしまう。


 ―日本の情報を世界に発信する

(柳川)
 東京一極集中の問題なども含めて、今回の震災から、全体の仕組みを変えていくことは、本質的には非常に重要なこと。
 リスクマネジメントも含めて国土全体の拠点づくりは、再構築というか、もう一度新たな視点で考えるということが重要だと思います。


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(感想・意見など)

 堺屋太一さん、柳川准教授の意見にほぼ全面的に賛成である。
 
 日本は、コレステロールがべったりへばりつき、梗塞寸前の血管のような状態である。
 バブル崩壊以降20年、国勢は停滞、経済は縮小しつづけ、日本は、国際的な地位をどんどん低下させている。

 にもかかわらず、親の世代は国債を乱発して、花見酒経済をどうにかもたせてきた。気の毒なのは、現在40歳未満の人たち。経済はどんどんシュリンクし、借金はパンク寸前。少子化で支える人数も少ない。親の世代より豊かにはまずなれない。

 血管壁のコレステロールを取り除かないかぎり、日本の再生はない。このコレステロールの中核に、公務員制度がある。この老朽化した公務員制度を改革しない限り、日本は、凄まじい勢いで衰退していくのは間違いない。

 民主党政権にある程度期待したが、世界はもの凄い速度で変化しているにもかかわらず、むしろ迷走・逆行している。
 そこに、この度の震災、原発事故である。日本は再度浮上できるか、急速に没落していくか、待ったなしの岐路に立たされている。

                                                以上




 
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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