子育て支援2

週刊東洋経済 11年3月26日号の「THE COMPASS」欄に中央大学の山田 昌弘教授が一文を寄せている。ご紹介いたします。
(見出し)
あらためて主張する 子ども手当は必要だ
(本文抜粋)
子ども手当が、完全に政局の道具にされてしまっている。子ども手当がどのような意味を持つのか、なぜ必要とされているかは、何も議論されない。
私(山田さん)は、昨年の参院予算委員会の公聴会で、子ども手当支持の陳述を行った。それが必要な理由は、若者の経済力低下に伴って、ここ15年の間に、子育て世帯の貧困化が進行しているからである。「子ども手当」という現金給付が望ましい理由は、それが子育て世帯の経済力を高めるには最も効果的だからである。
1990年後半以降の経済停滞が、非正規雇用の増大などを通じて、若者世代に最も被害を及ぼした。中高年世代の雇用や賃金に手をつけずに、若者の非正規労働者化が進み、正社員であっても若年者の賃金の伸びは鈍った。
問題は、収入低下に苦しむ若者世代が、結婚、子育て世代と重なるということである。その結果として、親同居・未婚者が増え、未婚化、ひいては少子化が起きる。結婚するには充分な収入がないからである。結婚したとしても子どもを育てながら苦しい生活を送る若い世帯が増える。
総務省「全国消費実態調査」の分析によると、未就学児を育てる世帯の年収は、94年をピークに減少に転じ、2004年には実質的に89年の年収に戻ってしまった。母子世帯に限ると、なんと84年の水準以前まで低下している。
高齢者を優遇している
日本経済は、90年代後半から00年代前半にかけて年1~2%の経済成長をしてきた。しかし、その恩恵は子育て世帯に回らず、子育て世帯の実収入は減少に転じた。一方、高齢者がもらう年金額は変わらない。……現役世代の生活水準だけが低下していく。そのような状態を見れば、結婚して子育てをするのを控えるようになる。これが悪循環となって、日本経済はますます縮小する。
日本は先進国の中で、政府が税金・保険料の再配分を行う際、高齢者への配分は高いが、若者や子育て世代への配分が大変低い。
若い世代への所得移転として、子ども手当は極めて効率的である。子育て世代の親だけが受け取ることができるし、若者の結婚や出産行動を促進するだろう。
子ども手当は、旧児童手当と扶養控除を組み合わせたものであり、旧制度より優れていることは明らかである。
子ども手当への批判として、高収入の世帯にも支給するのはけしからんという意見がある。……高所得者には税率を高めることで対応すればよいし、子どもを育てている高所得者と育てていない高所得者に差をつけることは、むしろ必要だと思う。
低収入の母親が多数いる
保育所の設置や子育ての相談などにおカネを使えという意見もある。これこそ、子育て世帯の現状をまったく把握していない意見。保育所を整備するのも必要だが、それ以上に職がないのだ。未就学児を抱える母親の就業率は、3割程度である。母子世帯の母親はほとんどが就業しているのに、ここ15年でその収入は大きく低下している。
保育所を整備することは正社員として就労できる母親にとっては朗報だが、そもそも就労先がない母親、就労してもパートなどの低収入の仕事に就かざるをえない母親にとって、子ども手当がどれほど助かっているか。
貯金している人もいるという批判もあるが、子ども手当の継続性が怪しい現在、一時的に使う気になれないだろう。また、進学費用に貯めているのなら、数年後に必ず消費されるはずである。高齢者の貯金とはその性質が違うのだ。
子ども手当が政争の道具となって支給されない事態になったら、親は何を信じて子育てをしていけばよいのか。……子どもを生み育てる親への手厚い支援が一層重要だと思う。
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(感想・意見など)
「子育て支援」については、11年3月12日のブログにさんざん書いたので繰り返さない。
子育て支援は、絶対必要です!国家戦略としてやるべき。
これだけは言っておきたい。ここ30年子どもを減らし続けてきた責任は自民党にある。1989年には(合計特殊出生率)1.57ショックと騒がれた。にもかかわらず、無策を続け、2005年には1.26にまで下げた。それがいまの少子化を招いている。反省もなく、この件を政争の具にしている自民党は、大バカ集団ではないか。
自民党は、出生率がいま程度(1.3台)のままでいいと思っているのか?1.3程度では低すぎると思っているのなら、何もしなくてもそのうち自然に出生率が上がるとでも思っているのか?
たとえ「バラマキ」であっても、問題があるなら効果的な対策を打つのが常識。大バカとしか思えない。つける薬がない。