「夜郎自大」になるな!

(直島:リ・ウファン美術館)
朝日新聞 11年8月19日「特派員メモ」欄 北京・吉岡桂子さんの記事から
(見出し)
中国では作れぬ展示館
(本文)
「これは中国では作れないな」―福島県白河市にあるJR東日本の「事故の歴史展示館」を見学した中国鉄道省の関係者の多くが、同じ感想をもらしたという。なかには幹部もいた。
展示館では旧国鉄時代からの重大事故の原因や対策を、パネルや再現装置を通じて学べる。誰がどこでどんな判断をしたかも記してある。社員向けの研修センターで一般には非公開だが、英語や中国語の説明書も作り、海外の鉄道関係者にも見せている。
事故の原因を詳細に分析すれば責任の所在が明らかになる。そんなことは中国では難しいということらしい。「失敗の記録を、なぜ外国人にも見せるのか」。そんな驚きも、共通していたそうだ。
日本航空は御巣鷹山の墜落事故から約20年たって、残った機体を廃棄する従来の方針を撤回。後部の圧力隔壁など部品を公開した。
今回の高速鉄道事故で事故車両を壊して埋めてしまう行動をみると、展示なんてほど遠い。だが、事故の防止は失敗を幅広く共有することから始まる。いつか、中国でも日本人が学べる展示館を見せてほしい。
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(感想・意見など)
吉岡さんの記事は記事でいい。ただ、老婆心ながら、日本もそんなに褒められたものではないということも言っておきたい。
JR東日本「事故の歴史展示館」が作られたのは2002年。(畑中洋太郎さんが失敗学会を作ったのも2002年)。最も大きな動機となったのは、1962年の三河島事故の教訓。死亡160名、負傷約300名という大事故。展示館ができたのはそれから40年後。
にもかかわらず、2005年JR西日本は、福知山線で死亡107名、負傷562名という大惨事を起こした。
原発事故の件もある。
毎日新聞 11年8月22日に載っていた川柳 「中国を笑える身分か原子力」
私のライフワークのひとつは、「日本はなぜあの戦争をしたのか?」。
この夏、その種の本を10冊は読んだ。
日本は、いまだに先の大戦の総括ができていない。
主犯は満州事変ごろからの陸軍。しかし、陸軍だけが悪いのではない。海軍が悪いこともあった。陸軍が必死に和平を指向したのに、文官が押しきったこともある。国民の歓心を買い、部数を伸ばすために戦争を煽りに煽った多くのメディアにも責任がある。ことは、確かに簡単ではない。
言えるのは、夜郎自大になった時、他国を侮った時、謙虚さを失った時、強欲になった時、空虚な言葉に酔った時、信賞必罰を怠った時、国全体より自らが属する組織を優先した時に、事実を見誤り、合理性を失い、途を誤った、ということである。