腑に落ちる農業論

腑に落ちる農業論

 「週刊東洋経済」11年9月17日号で『「作りすぎ」が日本農業をダメにする』の著者川島 博之さん(東大大学院准教授)のインタビュー記事が載っている(聞き手:塚田紀史さん)。

 山下 一仁さん(キャノングローバル研究所・元農水官僚)以来、久しぶりに、腑に落ちる農業論を読んだ。(抜粋で)ご紹介します。


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 日本の農業問題の原因はすべて「過剰生産=価格の低下」にあると〝異説〟を唱える。では、強い農業を育てるためにはどうすべきなのか。


農家を苦しめる過剰生産による価格安


――日本は食料を作りすぎているのですか

 過剰生産で価格が下落してしまう。それが農家を苦しめる。この現象は日本だけでなく、世界中で起きている。日本の農業が抱える問題を集約すればおおよそ三つ年寄りが増えている自給率が低い高コスト体質

 この半世紀、食料に生産革命が起きた単位当たりの収量は急速に上がり、食料が余りだした。農薬、肥料、機械をはじめ技術が発達し、担い手も少なくて済むようになった。江戸時代なら100人の食料を作るのに85人がかかわる必要があったが、今や必要な数は一人か二人
 作りすぎれば、価格は下がる。


――21世紀は食料危機の時代と言われています。

 それは、役人と学者が作り出した彼ら自身にとって都合のいい説だ。世界中で食料は余っている。食料は容易に作れ、過剰生産されているから、食料危機は起こらない


――担い手自体が減っています。

 日本でも多くの人が農村から都市に移っていく。食料の値段が下がって促進された。
 都市に住んでいる人にとって、今や食べることに切実感がなくなった月3万円もあれば三食が十分食える。その対極にいる農民にとっては、いくら食料を作っても安くなってしまうことになる。


――老人だけの農業で大丈夫かと不安視されています。

 現に65歳以上の高齢者でも楽に1億人分以上のコメが作れている。日本から農民がいなくなる心配はない。いくら担い手が減っていっても供給力は十分残る。


――食料自給率が問題と。

 自給率問題は農林水産省のかなり意図的なキャンペーンで、マスコミも乗った部分がある。食料自給率をフード・セルフサフィシエンシー・レートという妙な英語に訳すが、まず英語圏では通じない。もともとそんな概念がない。

 農水官僚や農水に関連する人たちが自らの存在に関心を呼ぼうと考えて作った概念だ。 

 自給率が下がっている理由は飼料の影響が大きい。安い飼料は海外から持ってこなければいけなくなるから、自給率は低くなる。

 国民に食料を安く安定的に供給することを政策目標にするのは正しい。そのために官庁がある。だが、この食料自給率は、本来的に政策目標にできない概念。ところが、飢えを経験した世代に受けた。今や食料は摂取しすぎが問題で、農水省の存在意義さえ問われている


――日本のコメの価格は米国産に比べ10倍とか

 政治がそうした。自民党は地盤だった農村の死守を図り、生産過剰状態でも何とか高値にしようとした。戦中立法の食管法(食料管理法)を逆利用し、コメの値段をどんどん上げて、都市の住民の所得を農家に移転した
 農民保護のために外のマーケットを閉じ、政府が関与して値段を支え、価格メカニズムが動かないようにした結果、高コスト体質になった。


――畜産や野菜はどうですか。

 今や農業で世界に伍していこうとしたら、合理化をし、生産効率を上げて大量に作る、薄利多売しかない。これは日本でも土地の呪縛から解放された養豚や採卵鶏、葉物野菜では明瞭に進んでいる。成功している人は、もはや農民より工場経営者という言葉がぴったりくる。
 裏腹に農家数は急速に減っている


地方の農業振興には人口減の覚悟が必要


――規模拡大の成果ですか。

 農業振興での村おこしを地方の首長がよく唱える。だが、食料生産の場としての地方は、農業の合理化、集中化を進めると、必然的に人口が減っていく


――それでも、強い農業を作るとすれば

 強い農業を作ることは、徹底した合理化を進めればできないことではない。コメは……大規模化して、たとえば100ヘクタールを一人で済むようにすればいいが、それではますます人がいなくなる。経済法則を果敢に入れれば再生するとしても、人が地方からいなくなると覚悟する必要がある

 畜産はすでに合理化が進み、卵は優等生コメ以外の自由化はできる土地問題も絡むコメは、当面はそっとしておいて時間で解決を図るのが現実的だ。米国も、日本が強いこだわりを持つコメ市場に入りこむ気はないだろう。
                                                   以上
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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