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子どもを産ませない社会

子どもを産ませない社会

 朝日新聞12年2月11日「終わりと始まり」欄に作家の池澤 夏樹さんがコラムを載せている。ご紹介します。


(タイトル)
人口減少
子どもを産ませない社会


(本文抜粋)

 新しい人口推計によれば、50年後に日本の人口は今の3分の2まで減るという

 我々は多くの疾病を克服してかつてないところまで寿命を延ばした。それでも人口が減ってゆくのは、産んで育てることをしないからだ。

 個体としての自分を生かすことと子孫を残すことは生命の基本原理である。生存と生殖。すべての生物はこの二つに全力を投入している。環境が許す限り数を増やそうとする。

 しかし、人間を他の生物と並べて語ることはもうできない。ヒトという種は自分たちに有利なように環境を変えて地表に君臨している。

 生物をして生殖に勤しませる原動力を快楽と呼んでいいかどうか、それはわからないが、本能の命令を達成することに個体として大いなる喜びが伴うのは間違いないだろう。

 近年になって人間は生殖と快楽を分離した。あまりに繁殖力が強いのでそのままでは人口過剰になって個体間の生存競争が激烈になる。しかし生殖に伴う快楽は捨てられない。

 だから嬰児を殺し、老人を捨て、江戸時代には村で余った若年層を都会へ出稼ぎに出した。

 避妊の技術が進んで、最近ではあまり殺さないでも済むようになった。生殖と快楽の分離が完成した結果、我々は一年中発情しながら生殖をしない、という矛盾に満ちた生物になった

 いわゆる先進国ではこの傾向が加速された。人間は自分の安楽を求めるために、子孫を残すことをやめた。

 人口が減少するのは当然である。本来ならば自然が介入してバランスを取ってくれるのだがヒトはそれを断った。

 けれど、社会として政治として、自然に代わって介入することは可能だったのだ。フランスがその事例を示している。2010年の出生率日本では1.39、これに対してフランスは2.00

 日本では5組のペアから7人しか子供が生まれないのだから人口が減るのは当然である。

 フランスでは出産と育児に対するケアが厚い。フランスでは女性の生涯を通じた労働力率のグラフが逆U字形をしている。日本ではM字形である。

 フランスの女性は出産と育児のために職場を離れるということがほとんどない。さまざまな手当や負担軽減措置があり、保育園などの支援の制度が完備している。

 更に、結婚しないままの同棲が多いことも出産を促しているかもしれない(同棲を法的に認めるPACS=連帯市民協約という制度がある)。

 日本式に言うと婚外子ということになる子の率は5割に近い。子を産む産まないはあくまで個人が決める。社会は全力を挙げて手伝う。

 日本の社会は子供を産ませないようにしてきた。高速道路は津々浦々まで届いたが今もって保育園の数は足りない。経営者たちは勤務と育児の並立など論外と言う。

 日本の人口減少は年金制度の崩壊などというレベルの話ではない。核戦争がなく、原発の事故がなく、食糧危機がなくても、我々は個々のわがままなふるまいの故に未来を失ってしまった。やがて静かに地上最後の日本人がいなくなる日が来る。


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以上
 
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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