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大切にしてもらった記憶

大切にしてもらった記憶

 朝日新聞12年3月11日「オトナになった女子たちへ」欄に、イラストレーターの益田ミリさんが一文を寄せている。
 
 こういうことは生きていくうえで大変大事なことだと思うので、抜粋してご紹介します。


 大切にしてもらった記憶

 
 普段は忘れて過ごしているのだけれど、たとえば、駅から家までの道を自転車で走っているような、そんな日々のなにげない瞬間に、ふと、誰かに大切にしてもらった記憶が蘇ってくるのだった。

 それは、とても小さな出来事だったりする。

 近所のおばさんは、台所で絵を描いていたわたしに、
 「上手やなぁ、おばちゃん、そんな上手に描かれへんわ」
 いつも言ってくれた。ご近所さんといえば、会えばかならず、
 「べっぴんさん!」
 と声をかけてくれた楽しいおじさんもいたっけなぁ。
 褒められるとうれしかった。

 あれは、小学校の1年生のときだった。遊び時間にクジ引きをすることになり、生徒たちはいっせいに担任の若い男の先生のもとに走った。ぐずぐずしていたわたしは、出遅れて一番ビリ。悲しくて、つまらなかった。けれど先生は、みんなが並び終えた後にわたしのところにやってきて、
 「一番最後に並んで偉かったな」
 そう言ってくれたから、わたしはみるみる元気になったのだった。何十年も前のことなのに、思い出すと気持ちが強くなる。

 親戚の家で熱を出したときに、冷たいタオルをおでこにのせてくれたおばさんのネギの匂いのする手、自転車で転んで泣いていたときに助けてくれた、お向かいのお姉さんの優しい声。父や母だけでなく、外の世界の人々が幼いわたしをひょいっと気にかけてくれた。

 そんなたくさんの「大切にしてもらった成分」が、大人になったわたしには詰まっているんだ、だから、きっと、わたしは大丈夫なんだ!なにが大丈夫なのかはわからぬが……自転車をこぐ足どりが、ふいに軽やかになったりするのだった。
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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