「鬼手」「政界汚染」★★★★☆


「鬼手」 濱嘉之さん (講談社文庫) 630円
「政界汚染」濱嘉之さん (文春文庫) 730円
濱嘉之(はま・よしゆき)さんの警察小説の魅力は、その経歴に由来するところが大きい。元警視庁公安捜査官。警察庁警備局、内閣情報調査室(内調)にも勤務。警視庁警視で辞職。衆議院議員政策担当秘書を経て、危機管理コンサルティング会社代表を務めつつ、小説も書いている。
「鬼手」は駐在刑事という変わった役どころが面白い。スーパーコップ。こういう駐在さんがいてくれると住民は安心できる。濱さんの小説にしては珍しくダメ警官も描かれている。
私の家に数か月前、近所の派出所の警察官がやってきた。家族構成などを聞かれたが、警察官の手元のカードを見ると20年以上も前のもの。20年間誰も巡回してこなかったようである。仕事をしているのか?
「鬼手」は、「世田谷駐在刑事」としてTBSでドラマ化されるとのこと。
「政界汚染」は濱さんお得意の公安警察もの。11年9月13日ブログ「完全黙秘」で活躍した青山望警部を中心とした同期の警部カルテットが主人公。
この本で面白かったのは、中国西部地域の青海省・甘粛省・チベットに、いくつかの電子監視所があり、電話やインターネット、世界中の無線電波を監視する中国版エシェロンが存在するという情報。また、中国は政府が国民を監視するため、PCなどの装置にはスパイチップが組み込まれているとのこと。
中国は通信機器の分野ですでに世界大手の企業があり、その背後には中国軍が存在しているため、アメリカやインドではその商品を「スパイ部品」とみなし、事実上の輸入禁止措置をとっている。しかるに、日本は野放しで、丸の内に自社ビルを堂々と構え、経団連にさえ加入しているという。日本は相変わらずのスパイ天国。
警察組織、政界を知り尽くしている著者でないと書けないことがギッシリ詰まっている。外れがない。コストパフォーマンスが高い。エンターテインメントとして安心してお薦めできる。
以上