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二宮尊徳翁の話

二宮尊徳翁の話

 
 佐伯泰英さんの小説〝夏目影二郎始末旅〟シリーズ一巻目「八州狩り」(光文社文庫)に二宮尊徳翁の話が出ている。一昔前まで各地の小学校には二宮金次郎さんの銅像があった。二宮神社も各地にあるようである。昔から具体的に何をした人なのか興味があった。ご紹介します。


    *    *    *    *


 小田原藩では分家の旗本領に派遣する尊徳に五石二人扶持、名主格を与えた。広間に大勢の人があふれて、尊徳報徳仕法の講義を熱心に聞いている。

 徳川幕府の開府から二百三十余年がたち、野州(下野しもつけ国:栃木県)の大名領、旗本領は疲弊にあえいでいた。天候不順による不作、飢饉も影響していたが、四公六民、あるいは五公五民といった納税の仕組みがもはや機能しなくなっていた。

 江戸にある旗本たちは、家計の苦しさに土地の豪農や金主に立てる『勝手賄(まかな)い仕法』を採用した。

 この方法は、旗本家の家計資金を優先的に支給するために領内の百姓に年貢の先納を命じた上で、それを抵当に、金主に金の運用をまかせるという方法であった。これでは反対に高利の負担をかかえることになり、領民に負担として重くのしかかった。

 農民は生産意欲を欠き、旗本はただ知行の先借りをして暮らしをしのぐ、それが『勝手賄い仕法』である。

 
 尊徳はこの悪循環を絶たねばならないと日本じゅうから集まってきた人々に説く。
 
 「藩の財政なり、家政なりを一夜で解決する特効薬は、ない、ありません……」

 「ひたすら領主と領民が理解しあい、信頼しあってこそ、財政は改善される。そのためには、最低十年の歳月を必要とする。まず過去十年の年貢収穫を書き出して、その平均を知ることから報徳仕法は始まる……」

 「……農民は十年来収穫した平均ならさほどの無理もなく上納できる。この年貢水準を割り出して『分度』とし、これを基礎にして収入と支出を組み立てる。大名家、旗本家のご用人どの、この枠内で厳格にご主人方の暮らしを立てていただく。この倹約がまず最初の一歩でござる。農民たちに『分度』の範囲内での上納を守らせる……」

 「しかしながらこの定免法による上納だけでは、ことは解決しない。ここからが肝心じゃ、まず領地内の荒れ地の開墾、新田開発に力を注ぐ……」

 「尊徳先生、そげんことはじいさんの代からやり尽くしましたじゃ」

 「その荒れ地開墾、新田開発はこれまでもやられた。だが、その新田は早速年貢米のなかに組み入れられていった、そうじゃな」

 「へい、そのとおりで」

 「まだ収穫が安定せぬ新田に旧田なみの租税をかけられたのでは農民もたまるまい。負担が増えるばかりじゃ。そこで新しい耕地には鍬下年季(くわしたねんき)をもうけて、十分に時間的な猶予をあたえた後に年貢収納地に加えていく」

 「それならええ、鍬下年季は何年じゃ」

 「それはその土地その土地の地味によって異なる。まあ、目安は五年から十年」

 「さらに農民への貸付金には利息をつけない」

 「じゃが、農民にも応分の負担は強いられるぞ。新しい耕地からの収入の一部を報徳冥加金(みょうがきん)として上納する……」

 「それならこれまでといっしょじゃ」

 「いや、違う。報徳冥加金は領主側の歳入とはせず、報徳金としてその地の名主なり、庄屋など世話役が管理して、次の荒れ地開墾などの費用にあてる……」

 「……これはよい」

 「さて開墾した荒れ地になにを植え付けるか。高野長英先生が書かれた『勧農備荒二物考(かんのうびこうにぶつこう)』では、飢饉に備えて、そばと馬鈴薯の植え付けを奨励されておられる。それらの作物はこの桜町(下野国:栃木県)の畑ですでに栽培されておるから、午後にでも見てもらう……」

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(感想・意見など)

 160~170年前の話である。現代にもほとんどそのまま当てはまる。〝入るを量りて出ずるを制す〟結局は、①ある程度経済を成長させ(荒れ地開墾、新田開発)、②公務員の給与等を民間並みに引き下げ、天下りを整理し、議員の歳費なども減額し、社会保障費(例えば医療費、高額な年金、生活保護費など)を圧縮するなど(尊徳翁の言う倹約)、③税収アップ(高額所得者に対する税率引き上げ、宗教法人に対する課税強化、消費税率引き上げなど)を粘り強くやり続けるしかない。


以上
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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