ドイツの構造改革

毎日新聞12年7月25「水説(すいせつ)」欄、専門編集委員の潮田 道夫さんのコラムが興味深い。ご紹介します。
ドイツの構造改革
(本文抜粋)
スペイン国債が再び急落、利回りはユーロ発足以来の高率になった。資金繰りは困難になる一方だ。
ユーロ危機はドイツが乗り出さないと収まらない。ドイツ人が渋る気分も分かる。
彼らが「欧州の病人」から「独り勝ちのドイツ」に至るには、血と汗と涙の物語があるのだ。
ウォールストリート・ジャーナルに先ごろ、シュレーダー前首相のインタビューが出ていた。ドイツはこの人が98年に政権を取って推進した「アジェンダ2000」という改革プログラムで、経済再生をなしとげた。
シュレーダー氏は左派なのに、やったのは企業の活力を引き出す自由主義的改革だ。
①所得税率のフラット化
②法人税の引き下げ
③社会保障給付の引き下げ
④労働市場改革など。③④が大きかった。
それまでのドイツでは、勤労者は50歳代半ばで退職し悠々自適の生活に移行した。いまドイツの平均引退年齢は63歳。そこまで働かないと年金がもらえないようにした。
ドイツの年金制度は手厚かった。そこで国は「失業者」に「職」をあてがい、それを拒否する人は「失業」認定しないことにした。失業手当が出ないから求職活動するほかない。
こうした改革で国と企業の負担が減り競争力が強化された。ドイツは年寄りも女性も働く国に国家を改造した。それが「強いドイツ」の原動力だ。ドイツも人口減少国家だが、労働参加率を急激に引き上げてカバーした。
政敵だったメルケル首相は就任演説で「シュレーダー氏に感謝したい。あなたの改革によってドイツは新時代に適合できるようになった」と述べた。
メルケル首相は援助を求める国々に、ドイツ流の改革を断行せよと迫っている。
ドイツは運もよかった。改革に踏み出したとき周辺国は「バブル」。輸出が増えて改革がうまくいった。
さはさりながら、50歳代で楽隠居の国だったのに10年長く働かされる国になった。ユーロ危機に次々とカネを出せば、臨終の前日まで労働せずばなるまい。救済を渋って当然だね。
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(感想・意見など)
ドイツのすごさはここにある。考えて考えてこうすべきだという結論が出たらやり切ってしまう。国民も苦いクスリを受け入れる。ものごと100㌫メリットばかりということはありえない。最善の策でもメリット70、デメリット30くらいであろう。
日本の場合、マスコミや野党はその30のデメリットばかりを問題にし、選挙民の反応を気にして与党の議員でさえ反対して、結局ものごとが進まない。「失われた20年」の真の原因はここにある。韓国の鼠(チウイ)大統領に「日本はたいした国ではない」と言われてしまう。
ドイツを見習って、覚悟して、お互いに苦いクスリを飲むべきである。
以上