米国復活!?…シェールガス革命




(3段目:愛媛新聞12年11月29日)
12年7月30日と8月10日ブログ『アメリカは「脱原発」!?』①②で、久しぶりにアメリカを訪問した田原総一朗さんが、「シェールガス革命」でアメリカが原発に全く興味を無くしていること、GEのジェフ・イメルトCEOが、「米国のシェールガスの普及でガスの価格が安くなり、世界の多くの国の電源がガスと風力や太陽光の組み合わせに向かっている」、と述べたことをお伝えした。
環境破壊や地盤沈下の心配はあるものの、「シェールガス革命」は本物ではないかと思われてきた。本物なら、世界史的な転換点となる。12年12月4日週刊エコノミストの記事を抜粋してご紹介します。
「石油の世紀」も転換点
シェールガス革命がもたらす中東の没落と化学業界の再編
北米で始まったシェールガス・オイル革命は、中東に依存していた世界のエネルギー供給構造を崩壊させる。 (和光大学経済経営学部教授 岩間 剛一さん)
今も、在来型の原油埋蔵量の3分の2は中東に集中する。
しかし、2年前から米国で商業生産が本格化しはじめたシェールガス、シェールオイルと呼ばれる新型ガス・石油が中東をはるかにしのぐ埋蔵量を持つことが判明し、世界のエネルギー供給構造に革命的な変革をもたらしている。
米国は09年にロシアを抜いて、世界最大の天然ガス生産国となった。天燃ガス価格は、00年代初頭と比べ12年4月には5分の1~8分の1くらいまで暴落した。
国際エネルギー機関(IEA)は、17年までに米国が世界最大の石油・天燃ガス生産国となり、米国はエネルギー自給率100%を達成し、エネルギー輸入の必要がなくなると予測している。
米国は250年~400年にわたって石油、天然ガス資源枯渇を心配する必要がなくなっている。
米国の双子の赤字が消える
米国は最大の輸入品目が石油である(約半分)。石油・天燃ガスの輸入が必要なくなるなら、大幅な貿易赤字の削減が可能となる。世界の火薬庫でもあるペルシャ湾の安全保障を目的とした多額の軍事費を中東に費やす必要性が消失し、財政赤字の改善にも寄与する。双子の赤字の解消につながる。
米国のエネルギー需給の緩和は国際エネルギー市場に玉突き現象のような影響を与えている。 米国内では石炭火力発電から天燃ガス火力発電への転換が進み、米国に輸出できなくなったコロンビア産の石炭がアジア大洋州に流入している。その結果、一般炭価格は、最高値の半額にまで暴落した。
シェールガスに随伴して生産されるプロパンガスの生産量増加によって、プロパン価格は半値以下となっている。
OPECは、12年11月8日に米国のシェールガス生産の増加によって、OPECの原油供給に影響がでていることを認めた。米国におけるエネルギー需給の緩和は、国際石油市場に大きな影響力を行使してきた中東諸国には大きな打撃となる。OPECの影響力低下は避けられない。
日本の化学業界にも波及
日本も他人事ではない。米国では、安価なシェールガスを原料とした巨大なエチレンプラントの建設計画が目白押しだからだ。日本は高価なナフサを原料としているが、米国はコストが10分の1のエタン(シェールガスの成分)を原料として年間150万㌧という世界最大級のエチレンプラント建設を計画している。
再選されたオバマ大統領も、安価なシェールガスを米国内の製造業再生の起爆剤と表明している。プラスチック樹脂の分野で、日本の石油化学企業の国際競争力はなくなっている。今後は、日本国内のエチレンプラントの統廃合、業界再編・事業再編が進むであろう。
さらには、米国から余剰なシェールガスを利用したLNG(液化天然ガス)の日本への輸出計画は、日本の割高な天燃ガス価格構造に大きな影響を与えるだろう。
シェールガス・オイル革命は、世界のエネルギー需給構造のみならず、産業構造の再編、世界の安全保障、マネーフローに劇的な変化をもたらす。
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(感想・意見など)
日本は地質年代が新しく、シェールガスの商業生産は期待できないそうである。先日、秋田でチョロっと出たとか?それにしても不公平である。アメリカのようになんでもある国が、「250年~400年にわたって石油、天然ガス資源枯渇を心配する必要がなくなっている」とは。嘆いていてもはじまらない。いつになるか分からないが、また採算が合うかどうか分からないが、メタンハイドレートに淡く期待することにしよう。
まだ明確でないからかもしれないが、今回の衆院選挙で、原発に触れない政党はないが、シェールガス・オイルに触れた政党はない。アメリカは、エネルギーとしての原発はもう見限っているというのに。
エコノミストの中原 圭介さんは写真の本で、アメリカは「石油社会」から「ガス社会」への転換を図るのではないかと予測している。従来のエネルギーよりも割安なシェールガスを普及させることによって製造コストを下げ、アメリカの製造業の競争力を増すことを考えているという。ガス中心社会へと転換させることによって、従来の規格やルールを全面的に見直し、自国に有利な方向へと産業のイノベーションを進めていくに違いない、という。
一例として、自動車産業を挙げている。日本やドイツに追いつき逆転する切り札として、ガス自動車を次世代のスタンダードにし、その技術の中核をアメリカの自動車産業が押さえようという動きがでてきている、とのこと。
戦争の原因は、エネルギー源をめぐってであることが多い。日本も米英などに石油を止められて、太平洋戦争開戦を決意した。
シェールガス・オイルから目が離せない!
以上