新グレートゲーム


アジアで米中が陣取りゲームを繰り広げている。日本もその一翼を担っている。毎日新聞12年11月23日、西川 恵専門編集委員のコラムを抜粋してご紹介します。
新グレートゲーム
「新グレートゲーム」。アジアにおける米国と中国の影響圏獲得をめぐる確執を指すが、11月19日のオバマ米大統領のミャンマー訪問はそれを象徴する一コマだ。
昨年3月、民主化に踏み出したミャンマーに、先進各国は経済制裁を徐々に解除し、首脳を送り込んできた。米国の大統領訪問はミャンマーに国際社会のメンバーズクラブの一員としてお墨付きを与える意味合いをもつ。
「時期尚早」との一部の声を押し切った訪問の背景には、軍事政権時代、中国一辺倒だったミャンマーを西側の影響圏に取り込む狙いがある。
そもそものグレートゲームは19世紀~20世紀前半にかけ、植民地インドを核に、中東からアジア、極東まで、ユーラシア大陸の南に勢力圏の弧を築いた大英帝国と、南下政策をとるロシアの間で繰り広げられた確執を指す。ユーラシア大陸を巨大なチェス盤に見立てた陣取りゲームである。
米中が影響圏を競う新グレートゲームは、中国と領有権で対立する日本、フィリピン、ベトナム、マレーシアなど、東シナ海から南シナ海にかけての海洋と、ミャンマーとタイとインドシナ3国の大メコン地域、それにインドとパキスタンが主舞台だ。
中国は大メコン地域を押さえると、インド洋への出口を確保し、インドと東南アジア諸国の反中の連結を分断させられる。一時、ミャンマー、カンボジア、ラオスの3国を押さえたが、ミャンマーの民主化と米大統領の訪問は中国のもくろみをつぶした。
かつて英露のグレートゲームで、日英同盟下の日本はロシアの南下政策をくじく大きな役割を果たした。日露戦争(1904~05年)が英露のグレートゲームの一環として極東で戦われた戦争でもあったように、尖閣諸島をめぐる対立は日中間の問題にとどまらず、新グレートゲームの一翼も担っている。
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(感想・意見など)
最近面白いと思った記事を抜粋してご紹介します。毎日新聞12年12月1日。
パレスチナ「国家」格上げ
国連総会採択 138か国賛成 米は反対
国連総会(加盟193カ国)は11月29日、パレスチナの国連での資格をこれまでの「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を138カ国の圧倒的賛成多数で採択した。
賛成は日本やフランス、中国、ロシア、インドなど。反対はイスラエル、米国、カナダ、チェコなど9カ国。ドイツや英国など41カ国は棄権した。
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アメリカが反対しているのに、珍しく日本が賛成している。私の推測にすぎないが、日本はアラブ諸国の反発を恐れたのだと思う。アラブ諸国を怒らすと、日本の生命線を握る石油やLNGの大半が入ってこなくなる。
イギリスが棄権しているのも面白い。イギリスは第二次世界大戦に勝ちたいため、二枚舌、三枚舌外交を繰り広げた。アラブ人とユダヤ人に矛盾した約束をした。現在のイスラエルをめぐる混乱の原因のひとつを作ったのはイギリスである。インドとパキスタン、ミャンマーなどの現政権(多数民族)対少数民族の対立の原因をつくったのもイギリスである。イギリスに限らないが、彼ら(宗主国)は自分たちの利益のため、世界各地でこういうことをしている。
戦前(1939年)に、平沼騏一郎総理大臣は「欧州情勢(独ソ不可侵条約)は複雑怪奇」なる言葉を残して内閣総辞職したが、世界は単細胞で一本気の日本人にはなかなか理解しがたいところがある。
以上