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若い世代が将来像を描けない国の行く末は…

若い世代が将来像を描けない国の行く末は…



 週刊新潮13年3月21日号楡 周平にれ・しゅうへい)さんのコラム「考えない葦」を抜粋してご紹介します。



 若い世代が将来像を描けない国の行く末は…


 今の時代に、定年を迎えるその時まで、一つの会社に居続けられると確信を持てる人がどれほどいるでしょうか。

 人間はいかに自分たちの暮らしを快適なものにするか、便利なものにするかに日々知恵を絞りながら今日に至りました。知恵は技術を生み、技術は産業を生み、産業は雇用を生んできました。しかし、それは生き残りをかけた競争の始まりでもあって、企業は労働の効率化を図り、生産性を高め、コストの削減に役立つ技術の開発や組織のあり方に頭を悩ますようになったのです。

 今の企業が欲しているのは、単なる人手ではありません。賃金に見合う成果を上げ続ける人材です。
 しかも、資質が認められ、首尾よく職を得たとしても安心とはいかないのが今の社会です。

 IT技術の進歩で職場と常に繋がった環境に置かれ、労働は厳しく管理され、評価される。自己研鑽を怠れば、身につけたスキルもたちまち陳腐化する。その一方で、テクノロジーはどんどん進化し、周辺環境は目まぐるしく変化する。人事評価は即座に報酬に反映され、要求を満たさなければ収入は頭を打ち、昇格も望めないどころか、職を失うことにもなりかねない。一個人が必至の思いで結果を出したとしても、肝心の会社そのものが新しい技術の出現、市場環境の変化によって、あっという間に傾きかねない。

 パナソニックの津賀一宏社長は、「うちの経営危機の本質は、二期連続の大赤字ではない。将来展望が見えないことです」と語ったそうですが、これは同社のみならず業界全ての共通認識でしょう。大企業であればあるほど、主力事業が不振に陥ると立て直しは極めて困難になるもの。

 そうなれば、今の時代に企業が取る手段は決まっています。リストラしかありません。パナソニック数万人。ソニー、シャープ、NEC、それぞれ一万人。富士通九千五百人。

 しかし、リストラが必ずしも経営の改善に効果があるかと言えば、決してそんなことはありません。リストラが始まると、真っ先に辞めて行くのが有能な人間だとはよく聞く話です。リストラ企業にとって本来残すべき人材が同業他社に流れようものなら、競合相手の戦力はますます高まる。経営再建は、さらに困難を極めるという悪循環に陥りかねない。

 そして、リストラされた圧倒的多数の従業員は、再就職先を探そうにも思うに任せず、幸い職を得たとしても、おそらくはかつての給与に遠く及ばない――。

 かつて日本には『猛烈社員』という言葉がありました。会社のために身を粉にして働くビジネスパーソンを指したものですが、同じ仕事に追われるにしても、あの時代と今とでは明らかに違います。かつての労働は、頑張れば報われる。給与も上がり、ポジションも上がっていく。終身雇用制度の中にあって、少なくとも定年まではこの会社にいられる。自分の将来像が描けたからこそ、仕事に邁進できたのです。

 しかし、今のビジネスパーソンが仕事に励まなければならないのは、排除されないため。いつ自分がどうなるか分からない。先が全く見えない漠とした不安に駆られながら、日々の仕事に追われているのです。

 「最近の若い世代はお金を使わない。ひたすら節約に努め、酒も飲まず、遊ぶこともあまりしない。いったい何のために働いているんだ」という言葉を耳にすることがありますが、そりゃ当り前でしょう。会社が未来永劫存在するなんて、あり得ないことに気がついているからです。放り出されたら最後、再就職は難しい。職にありつけたとしても、賃金は格段に下がる。その時に、少しでも生活の足しになるように、今から備えているのです。

 これは大変深刻で、同時に恐ろしい現象です。若い世代が、自分の確たる将来像を思い描けない。若くして守りに入り、消費を控える。それがどんな事態に繋がるかと言えば、答えは明らかです。

 経済、社会、いや国家の崩壊です。


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(感想・意見など)

 楡周平さんの現状分析は正しいと思います。ただ、結論には多少疑問があります。

 横方向で世界を見てみますと、1990年頃の社会主義圏の崩壊に始まる①経済のグローバル化(大量の安い労働力の供給)、1995年頃からの②ICT化。携帯電話が一般化し、インターネットなどが急速に普及し出しました。この2つが世界を大きく変えましたオフショアリングスマホ等やネット通販などは雇用を減らしがちです(3月18日ブログ「3寸先は闇」参照)。加えて日本は、1990年に③バブルが崩壊し、その後巨額の不良債権処理が大問題となりました。①と②は世界中に大きな影響を与え続けています。

 1997-8年にはアジア通貨危機がありました。日本では山一証券、北拓銀行、長期信用銀行などが潰れました。2008年にはリーマン・ショックで欧米が、現在は欧州財務危機でEUが、大変な状況になっています。大丈夫な国などどこにもありません。

 例えば、スペインの若者の失業率は55%だそうです。何かとサムスンがもてはやされる韓国は、公務員と十大派閥以外ロクな就職先がありません。若者がどんどん海外脱出しています。日本はマシなほうです


 縦方向で歴史的にみますと、日本の1965年ごろ~1995年ごろは、石油ショックなどがあったものの、例外的に恵まれた時代というしかありません。例えば、私の父は大正生まれですが、3回赤紙(召集令状)がきました。父の世代の多くは戦争で亡くなっています。1度は目を負傷して内地に送り帰されたそうですが、残った部隊は戦闘でほぼ全滅したそうです。昭和20年には岩国の軍需工場に居て、8月7日に広島に入ったため、(原爆の影響か)中年以降病気がちでした。寝ていて、よく自分の叫び声で飛び起きていました。「どうしたの?」と聞くと「機関銃の弾がビュンビュン飛んでくる中、銃剣突撃をした時の夢をみた」と言っていました。周りの戦友がばたばた倒れていったそうです。生きて帰れただけでも運が良かったというべきか。また、明治時代、江戸時代の人が楽だったとも思えません。


 そいう風に見ていくと、やはり、日本の1965年ごろ~1995年ごろは例外的に恵まれていたというべきで、むしろ右肩上がりのそのころ出来た色々な制度が今の時代に合わなくなっているとみるべきです。人生やっぱり楽じゃない。そう覚悟して、変えるべきは変えていくことです。それが出来なければ、楡さんの言うように、経済、社会、国家が崩壊するだけです。


以上
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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