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奴隷貿易

奴隷貿易



 欧米による奴隷貿易1500年ごろから明治維新(1867年)ごろまで続いた。わずか150年前の話である。

 週刊文春12年12月6日号「私の読書日記」欄にフランス文学者の鹿島 茂さんが『環大西洋奴隷貿易歴史地図』ディヴィッド・エルティス&ディヴィッド・リチャードソン著、増井志津代訳(東洋書林、9975円)を紹介している。抜粋してご紹介します。


 

 奴隷貿易は国家的事業だったこともあり、意外にインボイス(送り状)が残っている。

 1501年から1867年までの間にヨーロッパ各国(スペイン・ポルトガル・英・米・仏・オランダ・デンマーク・北ドイツ諸都市、バルト海諸国)が三角貿易によって新大陸に送った1250万人のアフリカ奴隷を、船隊の出発港とアフリカの奴隷積み出し港、そして北米・南米の荷下ろし港に分類し、どの国のどの港からどのくらいの規模の奴隷がどの国によってどの港に運ばれたかをクロス・レファレンスしてベクトル記号でマッピングした結果、奴隷貿易というものの実態が鮮明に浮かび上がってきた。

 北米本土への奴隷輸出は全体の比率からいうとたいした割合ではない。比率的にはカリブ諸島への輸出が圧倒的である。そのほとんどはイギリスとフランスによって担われた。

 しかし、全体から見ると、カリブ諸島よりもブラジルへの輸出がはるかに大きい。その貿易主体はポルトガルだった。英米に海洋の覇権を奪われた後も奴隷貿易大国として生き残り、19世紀初頭に各国で禁止令が出た後でも奴隷貿易を続けて、ブラジルに驚くべき数の奴隷を運び入れた。

 その積み出し港を見ると、西中央アフリカからブラジルの各港へと集中している。なぜ、こうしたルートが取られたかといえば奴隷運搬船は帆船だったので南大西洋の南東貿易風と偏西風および海流が決め手となった。

 また、「奴隷貿易時代においては、最も重要な海運上の覇権国家が世界で最も主導的な奴隷貿易商であった」という事実も衝撃的である。つまり、奴隷貿易は海上覇権とセットになっていて、スペイン・ポルトガルに始まって、オランダ、イギリス、フランスへと至る海上覇権国は必ずや最大の奴隷貿易国だった。

 奴隷貿易の覇権は移り、最後にもう一度、覇権とは関係なくポルトガルが最大の奴隷貿易国となって歴史を終えた。


 それにしても366年間に1250万人の奴隷貿易というのは凄いが、永続した理由はというと、基本的には「市場の力」である。奴隷貿易の三角貿易システムでは、砂糖、綿花、タバコ、コーヒーなどの貿易と表裏一体になっていたため、倫理的な奴隷廃絶運動が起きてもおいそれとは止められなかったのだ。しかし、最終的には廃止論者が勝利を収めた



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(感想・意見など)

 奴隷船による輸送中の死亡率については諸説ある。4分の1というのから1人の奴隷を届けるのに5人が死んだというものまである。鎖につないだ奴隷を高さわずか30㌢くらいの蚕棚に押し込んで運んだ。不潔なため感染症はアッという間に広まる。それを恐れて、生きている奴隷でも、サメがうようよいる海にどんどん放りこんだという。300万人から500万人が海に捨てられたという話もある。それでも利益率は30%あったらしい。

 
 アメリカには、1862年のリンカーンの奴隷解放宣言ごろまでに350万人の黒人奴隷が送り込まれたという。その後も、南部では、レストラン、公共交通機関、公衆トイレなどで「白人」「非白人」の差別があり、違反した非白人はリンチにあったり木に吊るされたりした。中国人や日本人も差別の対象になった。1950年代の末に始まった公民権運動によって1964年に市民権法が制定され、公式には差別はなくなった。わずか50年前の話である。

 
 小学生のころオーストラリアの「白豪主義」というのを習った。1901年に法制化された白人優先主義と非白人排除政策である。1973年に撤廃された。わずか40年ほど前の話である。

 1788年にイギリスが植民地化し、先住民(アボリジニなど)を弾圧、虐殺した。スポーツハンティングの対象にしたりもした。「今日はアボリジニ狩りに行って17匹を殺った」と書かれた日記が残っているという。

 2008年労働党のケビン・ラッド首相は公式に謝罪したが、賠償は行なわないと発言。一方、保守派の国民党や自由党は公式謝罪に反対し、抗議のため退席した。ほんの数年前の話である。


 南アフリカ共和国の人種隔離政策アパルトヘイトも有名である。
 1948年に法制化、1994年にやっと撤廃。20年足らず前の話である。



 「昨日のことを今日の目で見ない」は真理であるが、世界はまだまだ差別に満ちている



以上
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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