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阪神・淡路大震災の体験談

阪神・淡路大震災の体験談



 毎日新聞13年5月16日「五百旗頭真(いおきべ・まこと)の大災害の時代」を読んでいたら、何度も何度も、涙が噴き出てきて困った。抜粋してご紹介します。



 被災地が伝える体験


 体験した者にしか分からないことがある。それを体験していない人々に伝える任務が被災地にはある。そう考えて、私どもは阪神・淡路大震災の関係者に対するオーラル・ヒストリーを3分野で開始した。18年を経た今、本人の同意を得たものから順次公開が進みつつある。

 遠い地震と違って、直下型地震は、いきなり地下からドーンとはね上げる。飛行機が墜落したのかと思った人が多い。鉄の塊がわが家にぶつけられたとか、テロ爆発が起こったとか思った人もいたようだ。室内の家具だけでなく、家そのものや電車の車両すら空中にはね上げる縦揺れ一発のすさまじさが、10万棟以上の家を全壊させ、埋もれた数千人の命を奪った

 
 天災は無差別に人々を襲う。ただ受け手の方が異なる境遇を形作る。

 北淡町ほくだんちょう:現淡路市)町長は、壊れた家の出口が塞がれて風呂場の窓から外へ逃れた。奥様から町長さんは役場に行かなくていいのかと指摘されたが、倒壊家屋が路地を塞いで進めない。家族3人が生き埋めになっている。近所の人たちが、われわれが助け出すから、町長さんは早く役場に行けという。

 震源地にもっとも近かった北淡町は、1万余の人口で39人の犠牲者を出した。全半壊家屋の比率では最も高い。しかし北淡町が注目されたのは、誰もが知り合いである伝統的共同体の災害に対する強靭さである。町長は発災後3時間の町民の救出活動に驚嘆した、と回想する。

 「日ごろから親しくしている家のことですから間取りを知っており、無駄な時間を費やすことなく救出できました」(消防団副団長)。

 近代的都市である西宮市の幹部も、生存救出される地区とそうでない地区がはっきり分かれると、私に語った。何による差かと問うと、「簡単です。その地区に祭りがあるかどうかです」(教育長のち市長)。

 
 救護者も絶句する悲惨が、被災地には無造作に存在する。

 夫人防災クラブのママさんたちが神戸に出前をして、温かい豚汁をふるまうと、長蛇の列となった。だぶだぶのジャンパーを着た小さな男の子の順番となった。もう一杯、お母さんの分も持っておゆきと言ってやると、「お母ちゃん、地震で死んだんや」。「だったらお父ちゃんに」と言うと、後ろに並んでいた夫人がこの子はふた親とも失ったと解説する。いたたまれない気持ちになり、お父さん、お母さんの分も食べて元気になって、と鍋の肉をたくさんいれた。列をなして並んでいる人たちに、この差別扱いをとがめる者はいなかった(兵庫県婦人防火クラブ連絡協議会会長)。

 神戸市長田区で倒壊家屋に家族が埋もれた。そこに火事が近づく。隣の米穀倉庫の持ち主が、その倉庫を倒す決断をされた。江戸時代と同じ破壊消火である。屋根にロープをかけ50人ほどで引き倒した。「お陰で生き埋めになっていた人は、亡くなってはいましたが焼かれずに救出されました」(同区自治会連合協議会副会長)。

 生きたまま焼かれた例もある。芦屋市で2階建てアパートが倒壊し、若い娘さんが柱の下敷きになった。救出活動に火が迫る。娘は「お母さん、さようなら」と手を振った。消防団が「今いくぞ、頑張れ」と何度も水をかぶって突進したが、柱は動かず火勢は増す。母親が「行けば共倒れになります」と勇士たちを止めた(芦屋市消防団長)。

 長田区の焼け跡に、「助けてやれずにすまん」と合掌する父親の姿がテレビに映し出された。あの日、家族4人が埋まった。父親はなんとか自力で脱出し、傷ついたものの母親も救出された。地下へ向けて子供たちの名を呼んだが娘の声はない。が、息子ががれきの下から返事した。懸命に掘り出した。ついに息子の指が見えた。さらに堀り、腕を引っぱったが、重いものが体を押さえている。火が迫る。重機かジャッキがあれば。火の足は早く、熱い。息子が言った。「お父さん、逃げて」。だが息子は生きており、手を握れるのだ。どうして放せるか。息子が最後の言葉を発した。「お父さん、ありがとう。ボクはここで死んでいい。お母さんが助かってよかった」。父親は焼け跡で手を合わせた。「親には過ぎた子で……」


 針の先ほどの偶然で、生と死が分かたれる。価値観が変わるという言葉では済まない運命の鉄槌(てっつい)が人生航路を打ち砕く。それが大災害なのである。



(以上)
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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