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クラシック音楽の「別天地」東京

クラシック音楽の「別天地」東京 選択13年12月号




 このことは、恐らく多くの人が知らない事実である。「選択」13年12月号の記事を抜粋してご紹介します。



 名門楽団「来日ラッシュ」が叶う街
 クラシック音楽の「別天地」東京


 2013年11月の東京・サントリー大ホールの稼働状況を示す日程表。わずか半月の間に、世界の四大名門オーケストラが立て続けに演奏会を開催している。11月の首都圏での外国オーケストラ演奏会はとてつもない数になる。

 サントリーホールの楽屋裏で日程表を目にしたパリ管のコンサートマスターは、「どうしてこれをフェスティバルにしないの?」と真顔である。


 規制のない理想のマーケット

 名楽団の集中豪雨的来日、結果からすれば誰の意図でもない。80年代半ばのバブル期以降、こんな現象は恒常化している

 輸入規制大国として名高い日本国だが、どういうわけかクラシック音楽マーケットには一切規制が存在しない。無事に就労ビザを得て入国さえすれば、その途端に外国人クラシック演奏家の前には自由なマーケットが広がっている

 そもそも日本という国には、文化を管理しコントロールする国としての政策がないし、民間にも業界秩序や市場を守るための規約も慣例もない。日本クラシック音楽協会や、公益社団法人日本オーケストラ連盟はあり、日本音楽家ユニオンなる職種組合もある。だが組合が発行する演奏家ライセンスがあるわけでもなく、公演の演目や日程に組合の規制もない。

 例えば東京同様にプロオーケストラが乱立する英国のロンドンでは、事はそれほど単純ではない。第二次大戦終結直後、ロイヤル・オペラ・ハウスにウィーン国立歌劇場が来訪した際、オーケストラピットで演奏するウィーン・フィルに対し、音楽家組合との相談なく労働省がビザを発給した。これに対し音楽家組合がデモを敢行。以降、国内団体の活動を含め、ロンドンの音楽家組合は様々に市場のコントロールを試み続けている。組合と共存共栄の形を築きたい招聘主も、同時期に海外名門団体を英都で立て続けに演奏させ、組合との関係を悪化させるようなまねはしない。成熟した業界が出来上がっている。


 公演を支える成熟した聴衆

 自由な市場とは、チケット料金が青天井という意味ではない。海外団体の日本公演は、主催者の努力で採算ラインギリギリの健全な資本主義のルールに則って行なわれている。S席4万円で最廉価1万6千円のベルリン・フィル公演でも、公演必要経費を単純に座席数で割ると原価は10万円近くなるという。チケット代だけで成り立たせるのは不可能なのが現実だ。不足分は、主催者が代理店経由で大手スポンサーを募ったり、財団の予算から持ち出したり、自治体が公金で補填したりしている。

 それでも次々と日本に名門楽団が招聘されるのには理由がある。日本には演奏者や主催者の努力に見合った聴衆がいるからである。ウィーン・フィルとウィーン楽友協会合奏団が奏でる「第九」に4万2千円払うことが自分にとって有意義と考える人々が、日本にはたくさんいるのだ。

 20世紀末頃から、急速に経済成長するアジアの各都市に世界のオーケストラが来演するようになった。だが、中国の実態は、各都市がこぞって建てたが閑古鳥が鳴いている音楽ホールを、無理やり稼働させるため公金を注ぎ込んだ強引なイベントが多い。北京や上海の民間音楽事務所による公演は、楽団側がスポンサーを用意するのが前提。

 オペラや合唱にはそれなりの聴衆がある韓国でも、11月の日本公演とほぼ同額となったベルリン・フィル公演は、大企業文化財団の持ち出しでやっと成り立った。韓国の指揮者チョン・ミョンフンが手兵フランス国立放送フィルを率いたソウル公演でも、有料チケットは半分も捌けなかったという。

 11月のウィーン・フィルの日本公演では、ベートーヴェンの交響曲とピアノ協奏曲全てを聴く20万円也の通し券百セットがあっさり売り切れた。ベルリン・フィルも、4万円のチケットが争奪戦となる。いわゆる富裕層ばかりではない。本当に音楽が好きで、値段の対価として得る音楽に意味があると心から思っている。音楽業界も文化政策も未熟な音楽自由都市東京だが、唯一成熟したものがあるとすれば、これだけの数の目利き(耳利き?)の存在だろう。


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(感想・意見など)


 かなり昔に読んだ本に、ある日本人がニューヨークで演奏活動した時に、楽屋で何もしないでただ座っているだけの人が何人もいるので演奏ホールの責任者に尋ねると、ユニオンとの申し合わせで員外者に演奏させる時には一定数の組合員を雇うことになっているとのことであった。何と不自由なことよと思ったが、アメリカでさえそうである。ギルドの歴史が長いヨーロッパでは、考えてみれば当然のことである。彼らにしてみればそういう制約のない日本は別天地である。


以上

 
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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