FC2ブログ

経世済民(けいせいさいみん)

経世済民(けいせいさいみん) 四国14年1月11日




 大谷大学教授、元大阪大学総長で哲学者の鷲田 清一わしだ・きよかず)さんが、経世済民について四国新聞にコラムを寄せている。抜粋してご紹介します。



 誰のための経済か
 世を治め、民を救う?


 昨年1年の政治の動きを見れば、自民党が圧倒的な優位にある国会で、あれよあれよという間にいろいろの政策や法律が決まっていきましたが、日本のこれからを考えるとひょっとしたら取り返しのつかないくらいに大きな方向転換だったかもしれません。

 「経済」という言葉があります。「経世済民」という言葉を略したもの

 「経済学」、つまりエコノミックスという学問名が生まれるまでは、「経済(学)」は西欧では「ポリティカル・エコノミー」と呼ばれていました。リカードの「経済学および課税の原理」やJ・S・ミルの「経済学原理」、マルクスの「経済学批判」がそうです。そしてこの「ポリティカル・エコノミー」に、明治期、「経済」という訳語があてられました。江戸期にも使われていたこの語は、「経世済民」を略したものです。中国の古典に出てくる言葉で、世を治め、民の苦しみを救うという意味です。

 「経済」はこのように、いまでいう政治・経済を包含する概念としてあったわけですが、それが現在、本来の意味では機能しなくなっている。というのも、限られた資源と富の適切な配分と運用を意味する「経済」は、いまや殖財や投資を軸に動いているからです。グローバルな市場での死活の競争に組み込まれ、企業経営も株主の利益が最優先されてなされざるをえないからです。最大の関心はいまや自組織の生き残りにあって、企業はもはや「経世済民」を担う公器といえる存在ではありません

 社員の生活を護るために企業は利益を上げねばなりません。そのために政府は企業の支援をまっ先に考えます。平成期に入ったばかりのころは、法人税収はおよそ18兆円、所得税収は26兆円ありました。それが平成24年になると、法人税収は10兆円、所得税収は14兆円と、それぞれ2分の1ほどまでに落ち込んできます。他方、消費税収は3兆円強から10兆円強とおよそ3倍に増えています。

 企業については大幅な減税がなされているのに、片や一般市民の税支出はここでは3倍になっている。今春には消費税の引き上げがなされますが、国民の生活を護るはずの企業を支援するなかで、逆に国民の負担を増やしてゆく。そこで利を得るのはだれか。この国の民ではなく、国境を超えて利を漁る投資家です。

 さらにこの間、人件費を圧縮するために工場の地方移転や海外移転もくり返されてきました。それによって当該地域の産業構造をそっくり変え、人件費がさらに安い地域がみつかればまた工場を移転する(ときには法人税率のより低い国への本社移転もする)。そして地域は元の姿に戻れぬまま、崩壊してゆく…。

 これに先の特定秘密保護法によって国民の「知る権利」に強い制約が課せられたこと、さらには、完全な制御が不可能であることがあきらかになったはずの原発システムを海外に売り込む戦略なども考えあわせれば、この国の政治・経済は、株主資本主義・金融資本主義を軸に、「経世済民」をはみ出たところで動いていると言わざるをえません。

 何のための経済か?それを「経世済民」という原点に還って考え直さないと、経済が「民の苦しみを救う」ことでなくなる、そんな時代に入ってきているように思います。


以上

 
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

最新記事
カレンダー
12 | 2014/01 | 02
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カウンター