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「持たざる国への道」

「持たざる国への道」 中公文庫 860円
「持たざる国への道」 高知14年3月1日





 「持たざる国への道 あの戦争と大日本帝国の破綻」

 文庫本であるが、すごい本である。著者は、前内閣府事務次官の松元 崇まつもと・たかし)さん。私のライフワークの一つは、〝日本はなぜあの愚かな戦争をしたのか〟を探ることである。恐らく数百冊のその種の本を持っているが、松元さんがこの本で書いたような観点からの本は知らない。

 正直、難しい本である。しかし、最低でも「はじめに」と東京大学大学院教授の加藤陽子さんの「解説」だけでも読んでほしい。それだけでも十分値打ちのある本である。


 「はじめに」を抜粋してご紹介します。


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 『アンパンマン』の作者やなせたかしは、昭和18年の春、徴兵され、門司港から出港して台湾の対岸福州(ふくしゅう)に派遣された。それから終戦に至る状況は、「戦争しているとは思えないほど静かなところでしたね。本格的な戦闘のないまま、上海の近くの農村で終戦を迎えました。ぼくらは軍閥の悪政に苦しむ中国の民衆を助けなくちゃいけないと思って行ったのに、戦争が終わると『悪鬼のような日本軍』と石を投げられた。うちの部隊は学校を作って子どもに勉強を教えたり、食べ物をあげたりして何も悪いことはしなかったのにね」といったものであった。

 やなせにとって、そのような戦争が終わった日の8月15日は、我が国では「戦没者を追悼し平和を祈念する日」とされている。しかしながら、その日をそのようにとらえている国は、我が国以外にはない。どうして、そうなのだろうかというのが筆者が本書に込めた一つの疑問である。


 戦前、陸軍大将に宇垣一成うがき・かずしげ)という人がいた。その人が戦後に2・26事件(1936年)当時を振り返って「その当時の日本の勢というものは産業も着々と興り、貿易では世界を圧倒する。(中略)英国を始め合衆国ですら悲鳴をあげている。(中略)この調子をもう5年か8年続けて行ったならば日本は名実共に世界第一等国になれる。(中略)だから今下手に戦などを始めてはいかぬ」状況だったと回想している(『宇垣一成日記 3』)。

 そのように好調だった日本経済は、2・26事件の翌年に起こった盧溝橋事件(1937年)以降、日中戦争が泥沼化するに従って行き詰まっていった生活の窮乏化は英米のブロック経済が「持たざる国」である我が国を追い込んだためと受け止められた。その点は今日でもそう信じている向きが多いが、2・26事件当時に「英国を始め合衆国ですら悲鳴をあげている」とされたほどに繁栄していた我が国が突然「持たざる国」になって窮乏化していったわけではない

 経済原理を理解しない軍部の満州経営や経済的な負け戦となった華北経営が我が国経済を国際的な孤立の中で、じり貧に追い込んでいき、その結果「持たざる国」になってしまったのである。

 軍部による経済的な負け戦は、「贅沢は敵だ」といわなければならないほどに国民生活を窮乏化させていった。ところが、それを英米の敵対政策のせいだと思い込んだ国民は、英米への反感を強め、それをもたらしている張本人である軍部をより一層支持するようになっていった。そのような状況下で、本来戦う必要のなかった米国との大戦争に突入し国土を焼野原とされて敗戦を迎えたのがあの戦争であった。


(以後、次回)
プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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