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〝平穏死〟を考える

〝平穏死〟を考える サンデー毎日14年5月11-18日号
〝平穏死〟を考える 阿木燿子さん×石飛幸三さん
〝平穏死〟を考える 梅雨の高松市立図書館




 
〝平穏死〟を考える

 
 4人に1人が老人の超高齢社会となった日本。介護・看護・看取りは身近な問題である。果たして今のままでいいのか、という問題意識は常にある。

 サンデー毎日14年5月11-18日号で作詞家の阿木 燿子あき・ようこ)さんと血管外科医石飛 幸三いしとび)さん(特別養護老人ホーム「芦花ホーム」医師)が対談していた。抜粋してご紹介します。


 一生の間に使う医療保険の半分は、最期の3カ月に使っているんです。

 
 阿木 先生がご提案なさっている介護と看取りの問題、目から鱗が落ちた思いです。寝たきりになって、現実に胃ろうをするのかしないのかと家族の身として問われたら、どう答えるだろうか……と考えました。

 石飛 アンケートでもね、8割以上が自分はイヤだと答えています。医者なんて9割以上がノーなんです。でも自分の親、夫や妻になると、8割以上が救急車を呼んで、結果的に胃ろうをつけてしまう。

 阿木 いつの頃からか、日本人にとって〝覚悟〟という言葉が死語になってきているように思うんです。日本人って、家族を個として見ずに自分と同化させがちですよね。

 石飛 私、30代のときドイツの病院に赴任していたんです。日本の医療だと、自分が手術をした患者さんはずっと診ます。深夜に何かあっても必ず診ます。でも、ドイツでは夕方5時になると『もうお前の診療の時間は終わりだぞ。早く帰って、明日の朝7時までは自分の時間を持て』と言われるんですね。


 阿木これだけ長寿社会になってくると、国民全体のコンセンサスとして、老衰という一番幸せな死の形があることを思い出す必要がありますね。だって90歳すぎてもう食べられなくなって、枯れるように死ねたら、それは天寿を全うしたことですものね。


 阿木 妹は52歳という若さだったんですが、最期にアイスクリームを食べたがったんです。でも、甘いものはがんによくないという話を聞いていたので、野菜ジュースにしなさい、と言ってしまって。そのことを今でも後悔しているんです。人間って、おいしいと感じることで生きている実感を持てるんでしょうね。

 石飛 そう、味わうことは大脳に直結していますからね。

 阿木 ただ栄養だけを管から入れられても、それはただ肉体の存続でしかない気がします。

 石飛 だからこそ事前指示書を書いておかなくてはいけない。

 阿木 書面でもかなり効果があるんですか?「胃ろうはしない」と書いてあっても、家族はしてほしいと言いそうですが……。

 石飛 家族がもっとしっかり考えるべきなんです。栄養剤を注入して無理やり生かそうとするのではなく、その人の人格を尊び、本人の意思を考えてあげる。ここが抜けているんです。

 
 阿木 老衰に定義ってあるんでしょうか。

 石飛 あることはあります。ただ実態でいうと、まずはだんだん免疫力が落ちてきます。現代の人は飽食でメタボだから、まず動脈硬化が起こる。逝かなかった人は、さらに免疫力が落ちてきて、今度はがんです。がんというのは、要するに免疫力が落ちてきたからなるんです。

 石飛 まずメタボ、次はがん。それでも神様が呼んでくれない人は、どうなるでしょう?〝神の言葉〟をしゃべり始めるわけです。85歳をすぎてくると、4人に1人は認知症です。

 石飛 今、日本には300万人の認知症患者がいて、予備軍が400万人という統計もあります。でもね、さっきここで見たように楽しい人たちばかりなんですよ。

 阿木 えっ!さっきお目にかかった方たちは認知症なんですか。

 石飛 全員そうですよ。幸せに生きればいいだけの話なんです。なんだ、認知症になったっていいんだと、私自身一番教えられます。


 阿木 先生の理想の最期って、どんな形なんでしょうか。

 石飛 好きなものは食べさせてもらって、自分の好きなようにさせてもらいたい。それが私の哲学です。

 阿木 結局、60歳をすぎたあたりから、具体的に自分の死をどう捉え、どう迎えるかについてイメージしておくことが大事ということですね。

 石飛 苦しいのはイヤ、痛いのもイヤ。それを失くす方法はあります。イヤなことは避けた上で、食べたくなかったら食べなければいいんです。腹は空いていたほうが気分いいんですから。それで好きな酒だけ、ちょびちょび飲んでいればいい。そうすれば、やがて気落ちよく眠れます。

 阿木 眠るように逝くという言葉がありますが、眠ったまま起きなかったと。それって理想ですね。

 石飛 まさに大往生です。それを今は何をしているかというと、名前を読んでも起きないからと、救急車を呼ぶわけです。

 阿木 実はもう亡くなっているのに……。日本の医療費って、そういう無駄が多いんでしょうか。

 石飛 30兆円にもなりますからね。日本人が一生の間に使う医療保険のお金の半分は、最期の3カ月に使っているそうです。

 阿木 そうなんですか!

 石飛 でも、最期の医療費はほとんど負け戦。これでいいのだろうかってずっと思ってきました。大往生のはずなのに、病院に運ばれ、若い医師が死亡診断書を書かされる。でも、患者の過去の経緯は何も分からないから書けません。それで今度は監察医務院に回されるのですが、数が足りない。警察も放っておくわけにはいかない…揚げ句には解剖です。本来は大往生だったのに、大変な手間とカネが浪費されている

 石飛 でも、ここでは自然な最期を迎える人がたくさんいます。病院とは対極の自然死を迎える施設ですから。

 阿木 ここでは看取りまでなさるんですか。

 石飛 もちろん、それをやらないとこういう施設は意味がありません。私は医師として火をつけただけ。でも、介護士も看護師もみんな大賛成ですよ。

 石飛 ここに入って5年、10年たち、ご臨終です、となったとき、やっと楽になれたね、長い人生ご苦労様でした、そう本音では思います。看護師たちと一緒に体を拭いて、女性なら「お父さんに会いに行くんだから、こんな色の口紅がいいかしら」なんて、もうお祭り騒ぎです。

 阿木 本当に平穏で幸せな死という感じですね。

 石飛 本来は、それが日本の文化だったんです。お通夜では、みんなで酒盛りして楽しく送ってあげる。

 阿木 やはり人生は死を前提に生きないといけないなと思いました。

 石飛 現代医学は役に立ちますが、死を自然に迎えるためには、医療を加減すればいいのです。


(以上)

プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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