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中国情報③

中国情報③ 週刊コノミスト1年4月29日号
中国情報③ (講談社学術文庫)
中国情報③ アジサイ





 中国情報③


 戦前、日本は中国を見誤って泥沼に足を突っ込み、あの悲惨なアジア太平洋戦争に突入した。少数派ながら、中国は崩壊しないと言う人たちもいる。とにかく、我々のような、「規則は守るもの」「約束は守るもの」と律儀に思い込んでいるような人々には、思いもよらない民族である。週刊エコノミスト14年4月29日愛知大学教授の樋泉 克夫ひいずみ・かつお)さんの論を抜粋してご紹介します。


 浅薄な崩壊論を跳ね返す中国人の耐久力

 日本では、8億円で中堅政党の党首が辞任する。だが中国では「人民に政府を監督し、批判させる条件を創造しなければならない」と力説していた温家宝前首相の在任中に一族が10年間にわたって二千数百億円規模を不正に蓄財していたと報じられても、「首相在任時、不正蓄財を犯すような便宜を一族に与えたことは一切ない」と真っ向から否定するだけ。説明責任を問われることも、道義的責任を負うことも、ましてや罪に問われることもない。

 日本と中国を比較すると、人口は約11倍、国土の面積は約26倍。だから日本の常識は通らない。だから中国で起きたことは、日本の十数倍から30倍ほどに膨らませて考えてみるといい。


 法規を無視できる民族

 だが上には上がいる。目下、習近平政権が強力に進める反四風運動――幹部による形式主義・官僚主義・享楽主義・贅沢主義の四つの風潮(四風)――の最大の標的とされる石油閥のボスである周永康だ。1兆円を軽く突破するほどの不正蓄財が伝えられるが、胡錦濤時代(2003~13年)には9人の党中央委員の一角を占め、最高権力をほしいままにしていた。加えて、党中央政治委員会書記、党中央総合治理委員会主任として、公安・司法関係を統括していた。

 彼らの疑惑について、日本のメディアは、共産党独裁の弊害であり、民主化されたらこういった天文学的不正蓄財が繰り返されることはないだろうと報ずる。だが、はたしてそうだろうか。

 シンガポールのリー・クアンユー元首相は「中国が民主国家になったら即座に崩壊すると断言しておく。中国の知識人も理解している」と語る。華僑・華人を率いシンガポールの繁栄の礎を築いた指導者の言葉は、やはり無視できない。


 林語堂りん・ごどうの予見した現代中国

 盧溝橋事件の2年前の1935年のニューヨークで、20世紀中国の代表的知識人の一人の林語堂が『中国=文化と思想』(講談社学術文庫)を出版しているが、そのなかで「民族としての中国人の偉大な点」に言及し、「勧善懲悪の基本原則に元づき至高の法典を制定する力量を持つと同時に、自己の制定した法律や法廷も信じぬこともできるところにある。法律に訴える必要のあるもめごとの95%は法廷外で解決している」「罪悪を糾弾する力量があると同時に、罪悪に対していささかも心を動かさず、何とも思わぬことすらできる」「一切の規則、条例、制度を破壊し、あるいは無視し、ごまかし、弄び、操ることもできる」と記している。

 これを言い換えるなら、なんでもあり、だ。

 林語堂は将来の中国に思いを馳せ、「たとえ将来共産主義政権が支配するような大激変が起ころうとも、社会的、没個性、厳格といった外観を持つ共産主義が古い伝統を打ち砕くというよりは、むしろ個性、寛容、中庸、常識といった古い伝統が共産主義を粉砕し、その内実を骨抜きにし共産主義と見分けがつかぬほどまでに変質させてしまうであろう。そうなることは間違いない」とも記していた。

 78年末に中国が毛沢東思想を捨てて以来、驚異的な成長路線を驀進する中国経済には、先行き不安説が絶えることはなかった。中国経済崩壊の引き金と言われる影の銀行だが、地方政府が取り仕切る巨大な頼母子講といったところが、その実態だろう。


 影の銀行は100年前にも

 ここで視点を、19世紀末期から20世紀初頭の満州経済に移してみたい。当時の満州経済は、大豆・粕(かす)・油の「大豆三品」を軸に急成長を見せ、世界市場に参入を果たした。満州大豆生産者の大部分は「満人」ではなく、生きる道を求めて「闖関東(ちんかんとう)」(山東半島からの民族移動)怒涛のように満州に押し寄せていった漢族だった。

 その漢族農民を支配して上前を掠め取っていたのが、同じ漢民族の「銭匪」「吏匪」「警匪」の「三匪」による権力と財力とが合体した集金システムだった。

 当時、中国では銀行制度が統一されていなかったことから、満州でも地方銀行が独自紙幣を発行していた。銭匪と呼ばれた地方銀行幹部と、強欲な役人(吏匪)と官憲(警匪)とが結託して大豆農民から富を絞り上げた。

 影の銀行とは不動産業者と地方幹部と公安――現代版三匪――が連携し、権力と財力を合体させた強欲ビジネスの類に違いない。満州における大豆が、不動産に代わっただけ。「理財商品」にしたところで、銭匪が輪転機をフル稼働させて刷りまくった怪しげな紙幣に近いといえる。


 こう見てくると、中国経済崩壊の引き金と言われる影の銀行や理財商品は、地方幹部の持つ圧倒的権限、地方幹部と業者の癒着、地方幹部と中央幹部の人脈・派閥関係、弱い庶民――共産党政権成立以前から連綿と受け継がれてきた伝統的地方支配の仕組みにこそ、その根本病理が宿っているということだろう。

 林語堂が「古い伝統が共産主義を粉砕」すると記したのは共産党政権誕生の14年前で、今から80年ほど昔のこと。この間、中国では日中戦争、国共内戦と戦争が続き、建国後は4500万人が餓死したと伝えられる「大躍進」があり、60年代半ばから10年続いた文化大革命では、大躍進と同規模の犠牲者さえ生まれたといわれる。

 だが大躍進や文革の大混乱を経ても中国は崩壊しなかった

 それどころか、胡錦濤時代の「平和的台頭」を超えて、「経済的台頭」を追い風に「軍事的台頭」へと突き進む。その先に定めているのは中国の近代が嘗めざるをえなかった屈辱をそそぐこと、つまり復仇ふっきゅう)だ。

 中国は中国の論理で動く。日中戦争時の苦い経験の数々が、それを教えてくれている。


(以上)

プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子、足立康史、竜崎伸也ほか多数。

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