中小企業の海外進出例


日刊工業15年11月16日

日経16年1月16日‐17日

漫画『英国一家、日本を食べる』 左:西日本編、右:東日本編
(亜紀書房) 各999円

中小企業の海外進出例
現在、中国の経済破綻、それとも関連するが、石油など資源価格の暴落で、大企業といえども巨額の赤字を計上している。かといって日本も少子高齢化で人口が激減、市場が縮小することは分かり切っている。リスクはあるが、海外に進出せざるを得ないことも多い。
日刊工業新聞15年11月16日に『中小企業が「海外で製品を売りたい」と思ったら最初に読む本』(ダイヤモンド社)の著者、ピンポイント・マーケティング・ジャパン社長・大澤 裕(ゆたか)さんの記事を抜粋してご紹介します。
まず現地販売代理店で感触
――なぜ執筆を思いついたのですか。
「私自身、中小企業の跡取りとして家業の建築資材で海外展開する際、参考になる書籍がなく困った。自分の経験を基に、海外進出しようとする中小企業の役に立てればと筆を執った」
――どんな経験が基になっていますか。
「有能な米国人ビジネスパートナーとの出会いが大きい。彼は大手企業の営業部長を経て販売代理店として独立した人だった。米国のように広大な国で販路を築くには、自前主義は限界がある。自社に代わって販路を開拓し、アフターケアまで請け負う外部の販売代理店の存在が欠かせない」
―-具体的には、どう販売代理店を活用すればよいですか。
「販売代理店には顧客を探し、成功報酬を受け取る『セールスレップ』と、在庫を抱えて製品を販売する『ディストリビューター』の2種類がある。後者は会社規模が比較的大きく、かなり売れると判断した製品しか扱わない傾向がある。実績のない企業にとってはハードルが高く、まずはセールスレップから活用する方がよいだとう」
「セールスレップは日本ではあまり知られていないが、米国や欧州など広い地域で販路を開拓するには一般的な手法だ。米国なら同じ国内でも時差があり、出張するには2、3日かかる。顧客は身近な場所に担当者がいた方が安心だろう。今後はアジアでも広まる手法と見ている」
――中小企業のコンサルタントもされています。よく陥る失敗例は。
「市場性があるか分からないうちに、とりあえず海外に販売子会社をつくる企業が多い。最初から自前でと考えている。会社の登記や駐在員の人件費などに数千万円かかり、私にはバクチとしか思えない。まずは現地の販売代理店で感触を確かめ、いけると分かった後に子会社をつくるべきか考えた方がよい」
「グローバル人材の採用でも似たようなことが言える。最初から留学経験のあるバイリンガルを雇おうとする。まだ海外展開がうまくいかないうちに雇っても、結局、仕事がなくて辞めてしまう。現地の販売代理店を使うだけなら、出張時に通訳を雇うだけでも事足りる場合がある。外部の翻訳会社などを有効活用し、最初から自前で抱える以外の選択肢も検討すべきだ」
以上