東京三題(再掲)

東京3題
 (講談社学術文庫)
東京3題
 三田の島原藩下屋敷、坂上右手が松山藩中屋敷。
東京3題
 堺屋太一氏
東京3題
東京3題
 週刊ポスト12年9月14日




 
 2013年12月19日のブログを再掲します。


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 東京3題(再掲)


 ■ ①『氷川清和』から抜粋

 
 さて西郷の一諾で、一まづ事(江戸城開城)は治まったが、ここに今一つの困難といふのは、これから先、江戸の人民をどう始末せうかといふ問題だ。これには向ふでも困ったと見えて、西郷も「府下の事は何もかもさんが御承知だから、宜しくお願ひ申す」といって、このむつかしい仕事をおれの肩へ投げかけておいて、自分にはそのまま奥州の方へ行ってしまった。(中略)すると大久保利通が来て、是非々々と懇(ねんごろ)に頼むものだから、それではとて、おれもいよいよ本気に肩を入れるやうになったのだ。

 この江戸の市中の事は、おれはかねて精密に調べておいたのだが、当時の人口はざっと150万ばかりであった。そのうち、徳川氏から扶持を貰って居ったものは勿論、そのほか諸大名の屋敷へ出入りする職人や商人などは、みな直接間接に幕府のお陰で食うて居たのだから、幕府の瓦解とともに、こんな人たちは忽ち暮らしが立たなくなる道理だ。

 全体江戸は大坂などとは違って、商売が盛んなのでもなく、物産が豊かなのでもなく、ただただ政治の中心といふので、人が多く集まるから繁昌して居たばかりなのだ。それゆえに、幕府が倒れると、かうなるのはもとより知れきって居る事サ。

 就いてはこの人たちに、何か新たな職業を与えなければならないのだが、なにしろ150万といふ多数の人民が食ふだけの仕事といふものは容易に得られない。そこでおれは、この事情を精しく大久保に相談したら、流石は大久保だ。それでは断然遷都の事に決せうと、かういった。すなはちこれが東京今日の繁昌のもとだ。

 先に見せた草稿の中に、江戸が無事に終わったのは、西郷の力で、東京が今日繁昌して居るのは、大久保の力と書いておいたのは、まづこんなわけサ。



 ■ ②東京一極集中の話(堺屋太一さん)


 (戦争遂行のため)「昭和16年9月には「帝国国策遂行要領」が決定し,国家の頭脳機能は東京一局に集める,という政策が実行されます。国家の頭脳機能とは経済の中枢管理機能,情報発信機能,文化創造機能の三つです。この三つは東京以外ではやってはならない,と明確に決めました。

 では,その三つを東京に集めるためにはどうすればいいか。

 まず第一に,経済の中枢管理機能を集めるために,あらゆる分野に,全国統一の業界団体や職能団体を作らせる。日本鉄鋼連盟,電気事業連合会,自動車工業会,弁護士会,医師会,等々ですね。そしてその全国本部事務局を東京に集中させた。業界団体の会長は本部会議や官庁の懇談会など週に4回ぐらい呼び出されるから,東京以外には住めません。そうすると全国団体の会長になるような大企業の社長は東京に集まり,やがてその企業の本社機能も東京に移ってくる,というわけです。
 
 第二は,情報発信機能です。まず,出版物については,書籍元売り(取次会社)を,日販(日本出版販売),東販(現トーハン)など4社に統合,その全てを東京に集めました。 
 
電波の方は,さらに徹底しています。 
 戦後になって民間放送が生まれたときには,これがさらに強化されます。日本最初の民間放送は大阪の毎日放送(ラジオ)なので,ラジオは一極集中にはならなかった。ところが,テレビ放送の免許を与えるときには世界に類例のない「キー局システム」を作るのです。これは全国ネットのキー局を指定し,全国のテレビ局はその系列にする,という仕組みです。そしてそのキー局は東京しか認めていません。キー局の重要なところは,全国放送の番組編成権を握っていることです。
 
 第三は,文化創造活動を東京へ集中させたことです。その方法として,特定目的の文化施設は東京に集中,他所には造らせない,と決めたのです。例えば歌舞伎専門劇場などは東京以外に造らせない。東京には歌舞伎座,明治座に加えて,国立劇場を造ったのに,大阪では戦前(昭和初期)にできた千日前の歌舞伎座も潰させました(物販店に改築)。やっと最近,大阪の松竹座と京都の南座が歌舞伎専門劇場らしく改築されましたが,その間に関西(上方)歌舞伎は絶滅してしまいました。

 では,東京以外はどうするかというと,多目的ホールを造らせた。それしか補助金を出さないというわけです。これは,ナチスが考えたトータル・テアトール(全体劇場)の思想です。全国どこでも同じ形の劇場を造ることで,統一文化を普及しようとしたわけです。それを日本も昭和16年に受け入れ,戦後ずっと守ってきたわけです。」


 
 ■ ③日米繊維交渉にまつわる話(週刊ポスト12年9月14日号、東京新聞・中日新聞論説副主幹 長谷川幸洋ゆきひろさんの話:通産省OBの堺屋太一さんに聞いた話として)

 
 米国が繊維で日本に迫ってきた時、大阪の業界団体が、当時の通産省の繊維局長室にきて、我々の権益が守れるように米国と交渉して下さいとお願いした。繊維局長は「交渉しないという。業界団体は大阪じゃなくて東京に移せ。東京に来ないなら交渉はしないと。

 当時、大阪には繊維関係の業界団体が13あって、その13団体だけが霞が関のいうことを聞かず東京に拠点を置かなかった。繊維局長室に看板が掛けられていて、そこには敵は米国にあらず大阪にありとあった。

 結局、最後は業界団体の側が負けて、13団体の繊維工業連合会として東京に事務所を出した繊維局長もそれでよしとしてやっと米国と交渉をはじめた

 外交交渉は農水省や経産省の省益拡大のネタになってきたから、TPPでもどうやって天下り先を増やそうか、ということを必死に考えているはずです。


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(感想・意見など)

 ①の勝海舟、西郷隆盛、大久保利通の東京遷都の話は、(これだけが理由ではないのだろうが)よく分かる。人口150万人の江戸が失業者で溢れたら、新政府はたちまち立ち行かなくなる。

 ②の戦争遂行のための東京一極集中もある程度分かる。江戸時代は、次第に江戸に集中しだしたとはいえ、政治は江戸、経済は大阪、文化は京都と機能を分担していた。しかし、戦争遂行のため、経済の中枢管理機能、情報発信機能までは分かるとしても、文化創造機能までも東京一極集中というのは明らかにやり過ぎである。

 ③は、皆さんもう忘れかけているようであるが、官僚がいかに傲慢で省益第一であるかを表している話。驕りの極み。繊維局長室に「敵は米国にあらず大阪にあり」と看板を掛けていたという(今ならこの局長は即座にクビ)。堺屋太一さんは元通産官僚。嘘であるはずがない。官僚は、現役時代に天下りポストを増やした人が出世するという。彼らは、省益あって国益なし常に監視を怠るべからず



以上


プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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