キャシュレス社会にご注意を!

毎日新聞17年12月21日「経済観測」
松元 崇(まつもと・たかし)さんは元大蔵官僚、内閣府事務次官。

左が松元さんの著書。ある事象を金(資金)の面から見ることは非常に重要である。

松元さんの著書はできるだけ購入することにしている。

さしものあのアサガオ(ヒルガオ?)も今は寒さでこのような状態。ケヤキなども落ちるべき葉はほとんど落ちてしまい、朝夕の掃除からは解放された。

信じられないことに、あと1週間ちょっとでお正月!!これはよく行く喫茶店の葉牡丹。
キャシュレス社会にご注意を!
今、新聞・週刊誌などをみると、中国やスウェーデンなどはキャシュレス社会にほとんど移行していて、日本は遅れている、という論調ばかりである。
いや、それでいいんじゃないか、というご仁が初めて現れた。尊敬する松元 崇さんである。
私も中国のような国は特に心配である。個人情報のほとんどを政府が握りかねない。握りかねないというよりも、間違いなく握って、必ず国民を統御しようとする。
毎日新聞12月21日「経済観測」欄をご紹介します。
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フィンテックとプライバシー
中国でのフィンテックの進化が目覚ましい。香港のすぐ隣にある深圳市の日常生活からは通貨が消えたという。乞食(こじき)まで二次元コードを示してそこに送金するのだという。
現金を持ち歩かない生活はなるほど便利だろう。しかしながら、それが長期的な経済発展につながるかは疑問だ。
というのは、現金で担保されていたプライバシーが無くなってしまうからだ。それはケインズが経済成長の源泉だとしていた個人のアニマルスピリット(注:野心的意欲)を弱めてしまう恐れがある。
かつて、ソ連の計画経済が当初はうまくいくように見えたがやがてダメになったのは、計画経済という仕組みが個人のアニマルスピリットを弱めてしまったことが大きい。
中国が今、国家発展のために最優先課題としているのは反腐敗の徹底などによる社会の安定だ。フィンテックは、個人の消費行動を網羅的に把握することによって社会の安定に大いに貢献し、当面の経済発展にはつながるに違いない。
しかしながら問題は、それが長期的な経済成長を担保することになるかだ。しばらくはいいとしても、プライバシーの喪失が個人のアニマルスピリットを萎えさせてしまえば、10年、20年たつうちに、大きな壁に突き当たるのではないだろうか。
お金を使うたびに、どこで何に使ったかがすべて政府に把握されるという世界でアニマルスピリットが維持されるとは思えない。
日本でフィンテックの活用が遅れている大きな理由は、過剰なほどのプライバシーへの配慮が求められるからだ。日本でもフィンテックは進めなければならないので、現状は少し慎重すぎるかもしれない。しかしながら、長期的な視点からすると、それぐらいでちょうどいいようにも思う。
以上