イスラムテロに絡む歴史の背景

イスラムテロに絡む歴史の背景 産経15年1月23日
イスラムテロに絡む歴史の背景
 揚 海英(よう・かいえい)さんの内モンゴルに関する著作





 私と石原慎太郎さんの考え方はかなり異なるが、過去2千年の世界の歴史を50年~100年を1スパンとして鳥瞰すると、同意できる部分が多い。産経新聞1月23日「正論」欄を抜粋してご紹介します。



 イスラムテロに絡む歴史の背景


 誤解を招かぬために前言しておくが、私は9・11の連続テロに始まる「イスラム国」を含めての中東やアフリカにおけるイスラム系の残酷で非人道的なテロに共感する者では全くない。

 しかし、今回のパリにおける新聞社襲撃などが続く無残なテロ勃発の度、極時的に起こる非難の中に根底的に欠落しているものが在るような気がしてならない。

 それはこれらの事件が人間が文化を保有し、さらに加えて、いくつかの宗教を派生させてきた長い歴史の流れの中のいかなる時点で勃発したかという視点である。


 現在も続く文明の相克と悲劇

 ナイジェリアで多数の女子を誘拐し、奴隷化するなどと宣言したテロ集団の指導者がカメラに向かってわめいていた「われわれはキリスト文明の全てを破壊するのだ」という宣言には、きわめて重い歴史的な意味合いが在る。

 かつてニーチェは「西欧における神は死んだ」と言ったが、その神をこそ彼らは今改めて殺すと称しているのだ。しかし大それたその宣言の背景には、重く長い歴史的蓋然性があることを忘れては、この問題への正しい対処はあり得ない。

 ヘーゲルは「歴史は他の何のもまして現実だ」と説いたが、キリスト教文明とイスラム教文明の相克ははるかに古く、2世紀におけるサラセン帝国とキリスト教圏との衝突に始まり、中世の十字軍騒動以来、実は今日まで続いている。

 暗黒の中世期は主にヨーロッパが獲得した3つの新しい火薬、印刷術、アラブ人から伝授された大洋を渡る航海技術によって終焉し、新しい文明の所産である新しい技術が古い文明を駆逐してしまうという歴史の力学を世界中で展開した。

 その典型はスペインが持ち込んだわずか3丁の鉄砲が、インカ帝国をあっという間に滅ぼしてしまったという歴史の悲劇にうかがえる。そしてその悲劇は、イスラム教徒を含むほとんどの有色民族に及んだのだ。それこそが中世期以後の歴史の本流の姿に他ならない。


 隷属を強いられた有色人種

 中世期以後の歴史の本流はキリスト教圏の白人による、他のほとんど全ての有色人種の土地の一方的な植民地化と収奪による白人の繁栄だった。アフリカや中東、東南アジアの全ての地域は西欧諸国の進出によって区分され、植民地化されて、一歩的な隷属を強いられてきた。

 今日、声高に人権と民主主義を説くアメリカもまた、あの膨大なアメリカ大陸を、原住民だったアメリカインディアンを殺戮駆逐することで領有し国家として成立した。

 ちなみにこの世界の中でもっとも長く、最近まで黒人の奴隷制度を保持してきたのはアメリカに他ならない。その余韻は今でも頻発する黒人に対する白人警察官の発砲事件として続いている。

 近世において近代国家として再生した日本はその中で稀有なる例外だったが、日本もまた、敗戦後の日本を統治解体したマッカーサーが退任後、アメリカ議会で証言したように、あくまで自衛のための手段として西欧の列強を真似して軍国化し植民地支配に乗り出さざるを得なかった。

 起こした戦争を含めて有色人種の中で唯一の近代国家としての日本の誕生と存在は、世界史の流れに逆らって大きな引き金を引いたのだ。


 新しい宗教戦争の到来

 視点を現実に起こっているイスラム系のテロに向け直せば、中世以後のアラブやアフリカが強いられ被った歴史を見直せば、彼らが今改めて、西欧の神を殺すと宣言して憚らぬ所以の歴史的な蓋然性に気付くべきにちがいない。

 パリの新聞社に向けられたテロについての強い非難の論拠に、フランスがかつての革命で手にして国是として掲げている「自由、博愛、平等」を踏まえるのは妥当としても、かつて植民地として支配したアルジェリアや他のアフリカや中東のイスラム圏で、それらの国是がはたして同じ人間のイスラム教徒に保証されていたかどうかは、あのドゴールさえが手を焼いたアルジェリアを巡る紛争を振り返れば自明のことだろう。

 世界中を大きな不安におとしめているイスラム系のテロに冷静に対処するためには、あれらの暴力行為の歴史的蓋然性について自覚することこそが何よりも肝要に違いない。

 要約すれば、数世紀続いてきた白人の世界支配がようやく終わろうとしている今、新しい宗教戦争が始まろうとしているのだ。


...............................................................................................................


 (感想・意見など)

 例えば、アメリカで9.11のテロが起こったとき、中国がいち早く反テロ活動に賛意を示したことに違和感を抱いた。「お前が言うな」である。確かに、テロで何の関係もない人を巻き込むのは全く許せない。しかし、中国では年間20万件以上もの暴動・テロが発生している。それにはそれなりの理由がある。

 中国の土地は国有である。それをいいことに、国家や地方政府や軍と共産党幹部がぐるになって、まともな補償もなしに一般人を追い立て、極めて短期間に、ビルやマンションを建て、工場を作り、道を通し、鉄道を敷設し、自分たちの私腹を肥やしている。追い立てられた側は悲惨である。暴動が起きない訳がない。

 最近、揚 海英よう・かいえい)さんの内モンゴルに関する著作を読んだ。チベットやウイグルや内モンゴルなどの少数民族は、なまじ地下資源が豊富なため中国に組み込まれ、、実に悲惨な境遇に追い込まれている。かつてのアメリカインディアンと同じである。絶望的状況の彼らが、座して滅亡するよりも、テロに走らざるを得ないと考えるのは理解できる。

 「造反有理」と言ったのは、毛沢東である。因果応報という言葉もある。できるだけ共存できる道を探るべきである。


以上

 
 

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

最新記事
カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
リンク
カウンター