時代小説の醍醐味

時代小説の醍醐味
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 時代小説の醍醐味の1つ


 私にとって時代小説の魅力とは、ストーリーもさることながら、折々に挟まれるうん蓄にある。勿論事実でなければならない。

 つい先日読み終えた澤田ふじ子さんの公事宿事件書留帳シリーズ第13巻『 雨女 』を例にとれば、次のような文である。抜粋してご紹介します。


.......... ..........


 夫に死なれたため筆屋を廃業したお松は、相国寺の東脇で隠居住まいをしていた。屋敷を売るため、俵屋町の町年寄に相談したが、町内に適当な買い手がなく、一旦、売却を引っ込めていた。

 こうした折、上隣になる大炊町(おおいちょう)の町内で針問屋を営む「もず屋」芳左衛門(よしざえもん)が、筆屋の店家を買いたい者がいる旨を、お松と俵屋町の町年寄に伝えてきた。

 大阪から年に数回、針を仕入れにくる吉助(よしすけ)という男だといい、結果、針屋のかれに売却されたのである。

 「その吉助はんの身許(みもと)は、確かどっしゃろなあ――」
 「それは律儀で確かなお人です。大阪の道頓堀に小さな店を構え、縫い針や小間物を扱うておいやすそうどすわ。うちの店での仕入れに、これまで一度も不都合はございまへんどした。ご町内に針屋も小間物屋もありまへんさかい、障(さわ)りはないのと違いますやろか」
 町年寄たちのこうした声で、すべてが決まった。

 俵屋町の町内の誰もが、筆屋の店家がいくらで売られたのか、全く知らなかった。

 江戸時代、問屋は小売屋の利益を守るため、消費者への小売りは絶対にしなかった。
 針屋のもず屋には、なんの障害もないわけで、俵屋町の人々は、やがて町内に針屋か小間物屋が店開きするものと考えていた。


 こうした土地や家の売却法、あるいは商法は、町内の者や多くの人たちが安心して暮らすための優れた掟。また表通りにお店(たな:表店)を構えるほどの商人(あきんど)は、裏店(うらだな:長屋)を建て、貧しい者たちを住まわせねばならぬ責務を、暗黙裡に負わされていた。江戸時代の社会構造は、みんなが安らかに生活していくことを、最重要に置いていたのであった。

 仮に騒音を発する鍛冶屋が、静かな町内に住むとなれば、なにかと問題が起き、やがては争いとなる。

 まず町内から買い手を募り、それがなければ隣の町内にも相談をかけ、職種まで吟味する。町年寄が売り手と相談しながら買い手を決めるのは、町を平穏に営んでいくための深い知恵というべきであろう。


........... ...........


 立花りっか)はもとは供花(くか)だったが、室町時代に流儀として頂法寺(六角堂)で発生し、男の学ぶべき芸事(げいじ)として伝えられてきた。

 池坊の諸国にわたる「門人帳」を見ると、男たちの名前がずらっと連ねられている。

 花(立花)が女性の嗜(たしな)みと認識されるようになったのは明治初期から。女性教育の一つとして取り入れられたからだ。

 これをどうして男が行っていたかを説明するには、勃興した室町期、戦乱に明け暮れたその時代背景に、考察の目を向けねばならないだろう。

 戦いにしろ商いにしろ、どうしたら相手に勝てるか戦略を練るとき、男たちには<静謐(せいひつ)>が必要だった。

 酒池肉林に溺れていては、その方法が考えられない。だからこそ静かに花を活けたり、茶を点てたりして思案したのである。

 花や茶湯(ちゃのゆ)、庭などは、いまでは雅なものと考えられているが、日本文化の精華とされるそれら芸事の背後には、凄まじいものが秘められていたのであった。


など


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プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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