鬼の初恋

鬼の初恋
 産経新聞16年1月30日
 1998年6月、板門店に向かう前に牛をなでる韓国・現代グループ名誉会長の鄭周永(チョン・ジュヨン)
鬼の初恋
 毎日16年1月30日
鬼の初恋
 昨日、近所の空き地で凧あげとサッカーの練習をしていた子どもたち。左側3人の男の子が座っているのは1人がケガをしたため。
鬼の初恋
 ボーダーの女の子が一人で踊っていたのが面白かった。
鬼の初恋




 鬼の初恋


 13年12月16日ブログ「世の中スパイがうじゃうじゃ」にこう書いた。

 韓国現代財閥の創業者鄭 周永チョン・ジュヨン)は、それまで1万5千トン級の船しか造ったことがないのに30万トン級の船を受注。日本のある造船所にスパイを潜り込ませ設計図から道具までコンテナ2台分を盗んだそれを基に大型船を造れるようになった

 ダイエーの創業者・中内 功(なかうち・いさお)は兵隊としてフィリピン戦線で死線を彷徨い、飢餓に悩まされた。その後、神戸に引き揚げ「主婦の店・ダイエー」を日本一の流通業に育て上げた。その中内さんが何かに書いていた。敗戦直後のドサクサに「○○と△△以外は何でもやった」。混乱期の創業者にはそういう人が多い。

 鄭 周永は裸一貫で現代自動車工業社を立ち上げ、朴正熙政権に食い込み、一代で韓国最大の財閥に育て上げた。その間、上記の盗みをはじめありとあらゆることをやったことは間違いない。その鬼にも弱点があった。「初恋」である。北朝鮮の金正日はそれを最大限に利用した。

 産経新聞1月30日龍谷大学教授・李相哲さんの「秘録 金正日」を抜粋・一部編集してご紹介します。


 韓国財閥から救いの手
 失郷民の「初恋」が生んだドル箱


 破綻する経済や離れ行く民心、深まる国際的孤立…。八方ふさがりの金正日(キム・ジョンイル)に救いの手を差し伸べた韓国人実業家がいた。

 1998年6月16日、当時、韓国最大の財閥だった現代(ヒユンダイ)グループの名誉会長、鄭周永が、牛500頭を連れ、南北軍事境界線の板門店を通って北朝鮮に入った。牛はトウモロコシ5万トンとともに北朝鮮に提供を約束していた1千頭の半数だ。

 トラック50台に牛を載せ、陸路北を目指し、その模様は生中継で世界に伝えられた。

 牧歌的な牛の越境は94年の金日成(キム・イルソン)死去後、冷え切っていた南北関係に融和ムードをもたらす。金大中政権が掲げ、後に「太陽政策」と呼ばれる対北包容政策のつゆ払いとして打って付けの演出となった。


 1頭が1千頭に

 鄭周永は1915年、北朝鮮南東部の江原道通川に生まれた。南北分断で故郷への往来を断たれた彼のような存在を「失郷民」と呼ぶ。

 89年に訪朝し、故郷に近い金剛山(クムガンサン)の観光開発で合意したものの、政治状況に翻弄され、再訪できずにいた。北朝鮮事業に懸ける思いについて側近の李益治に常々、「統一のためでもあるが、初恋の彼女に会うためだ」と語っていたという。

 80歳を超えても忘れえぬ初恋の相手とは、故郷の里長の娘だった。当時、近隣で唯一新聞を定期購読する里長宅に読み終えた新聞をもらいに10里(朝鮮時代の約4キロ)の道を通った。里長宅の少女を前にすると、顔がほてり、心臓が脈打ち、新聞を渡してくれる手をチラッと見るのが精いっぱい。「天使のようだ」と感じていた。


 18歳のとき、父が牛を売って得た70ウォンをくすねて家出。46年に現代自動車工業社を設立し、一代で韓国最大の財閥に育て上げた

 北朝鮮入りする前には、誇らしげにこう述べた。
 「そのときの牛1頭がいま1千頭になった。私はその借りを返すため、故郷を訪ねていくのです」

 一方で、韓国メディアは、用意した牛やトウコロモシだけで137億ウォン(現在のレートで約13億円)相当に上り、金正日にこれとは別に、相当額の「入場料」支払いを約束したはずだと報じた。


 「名誉会長先生」

 鄭周永の訪朝が注目されたのには、ベールに包まれた金正日が姿を現すのではないかという「期待」もあった。だが、98年6月の訪問では空振りに終わる。

 実物の正日登場は同年10月、2回目に牛501頭を連れて行った際だ。
 「五大(財閥の)創業者のうち、唯一存命中の鄭名誉会長先生にお会いできて光栄です」

 ビジネスに話が及ぶと、正日は「金剛山事業は細かく分けて行う必要はありません。全部、鄭名誉会長先生がやってください」と応じ、太っ腹ぶりを示した。


 「恨」を抱いた死

 鄭周永と金正日との面会が実現した後、現代グループの北朝鮮事業は順風に帆を上げたかに見えた。11月には、韓国から金剛山に向かう遊覧船「現代金剛号」が初出航し、金剛山観光事業がスタートする。

  正日 「よい観光地にするには、娯楽施設がないとだめだ。山を眺めるだけではだめだろう。金剛山がいくら名勝でも遊ぶ場所も、酒も女もないとだめだ」

 だが、莫大な見返りがあればこその特別「配慮」だった。現代グループは、金剛山開発の利権を手にするのに9億ドル(同約1千億円)以上を支払ったとされる。死に体の北朝鮮経済にとって天の恵みとなった。

 金剛山の入山料として、スタート時に観光客1人当たり300ドルを徴収し、観光事業は、恒常的にカネを生む〝ドル箱〟と化した。

 事業の進展を楽観した周永は、ソウルに70億ウォンの物件を購入。初恋相手と手をつないで散歩して余生を送る夢を持ち、正日に彼女を探してほしいと依頼した。


 しかし、2000年6月、南北首脳会談直後に平壌を訪れたとき、正日から「(北東部)清津(チョンジン)に住んでいたが、2年前に死んだ」という知らせを受け取る。

 「2年早かったら、わが峨山(アサン)病院(現代グループ傘下)で最高の治療を受けたろうに」と周永は悲嘆に暮れたという。翌年3月、失郷民の「恨」をだいたまま、この世を去った


 北朝鮮の独裁者に見初められた現代グループだが、通貨危機のあおりで財閥は解体。北朝鮮事業の赤字と政治的不安定さはグループを圧迫し続け、対北秘密送金をめぐって検察から事情聴取された周永の五男・夢憲は03年8月に自殺する。 =敬称略


以上


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teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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