スーパー公務員列伝②

朝日新聞2016年2月6日

高松高検検事長 酒井 邦彦さん

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スーパー公務員列伝②
2016年1月2日「スーパー公務員列伝①」では滋賀県野洲(やす)市のスーパー公務員・生水 裕美(しょうず・ひろみ)さんをご紹介した。
今回は、高松高検検事長 酒井 邦彦さん(61)。
共通するのは、与謝野鉄幹の歌に「友を選ばば書を読みて、六分の侠気(きょうき:おとこぎ)、四分の熱」とあるように、侠気と熱。そのひとが公務員で、関係各部署と情報を共有し連携すれば、大抵のことは成し遂げられる。
公務員の所得はその地で上位15%には入る。身分も保障されている。公務員ならではの権限を持っていることも多い。公務員が連携して、「世のためひとのため」に働いて、「一隅を照らして」くれたなら、より良い社会になる(のに)。
朝日新聞2016年2月6日be(土曜版)を抜粋してご紹介します。
児童虐待防止 検事が挑む
昨年度約9万件が発覚し、24年連続で過去最多を更新する児童虐待。検察内にプロジェクトチームを立ち上げ、異例の手法で撲滅に挑む。
例えば、児童相談所(児相)との協力。これまで検察は、児相などの行政機関と連携することはほぼなかった。
児童虐待事件では、親が逮捕されても、子どものけがが軽いといった理由で不起訴になることがある。しかし、自宅に戻った途端に子どもを暴行し、死なせる例が後を絶たない。こうしたケースを防ぐには、事件の背景や、加害者の過去の虐待なども把握することが必要だ。
そこで、起訴するか決める前に、児相や学校に話を聞く「事前協議」を始めた。
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処分保留で釈放した場合も児相に連絡。加害者には「処分はあくまで保留。今後はあなた次第」と念押しし、児相の指導をきちんと受けなければ起訴もあると釘を刺す。これまで児相の職員は虐待した親が逮捕後どうなったかさえわからなかったのだから、大きな違いだ。
児相が子どもを守るために家庭裁判所に申し立てをする際には助言や情報提供をする。自治体の第三者委員会にも積極的に協力する。捜査情報を外部に出すのは本来ご法度だが、子どもの福祉のため必要と判断した。
プロジェクトチームで陣頭指揮をとり、管内の虐待事件の記録を取り寄せて分析を重ねた。事件の立証に欠かせない法医学の知識を学ぼうと、医師と研究会も開く。
「これまで検察は社会から離れ、少し高みに身を置いていた。でも司法というのは本来、もっと社会に働きかけるものだと思うんです」。
昨年4月には、検察のあり方を提言書に取りまとめ、トップの検事総長も高松を視察。最高検は虐待防止の集中議論を始めた。
「すべては酒井さんが赴任されたおととし7月に始まったんです」。高松の児相、香川県子ども女性相談センターの岡悦子所長は振り返る。「自転車に乗って1人でふらりといらっしゃって『見学させてください』って」。検事長といえば全国8カ所しかない高検のトップ。
慌てる職員をよそに施設を一通り見学すると「これからは協力しあっていきましょう。困ったことがあったら何でも言ってください」と言い残し、去って行った。岡所長は「突然で緊張したけれど、味方ができてうれしかった」と話す。
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児童虐待は密室で人知れず繰り返され、幼子は被害を誰かに訴えることすらできない。長い検事生活で、最も残酷で心痛む犯罪だと思うに至った。「検事としてできることがもっとあるのではという思いが、通奏低音として自分の中で響いていた」。虐待防止のシンポル「オレンジリボン」のピンバッジが胸に光る。
視覚障碍者の伴走が休日の楽しみ。地元の伴走クラブで練習を積む。盲ろう者の伴走者として出場する香川丸亀ハーフマラソンでは、「チームオレンジリボン」の一員として、児相職員らと虐待防止を呼びかけ、走る。
(文・岩本美帆さん、写真・川村直子さん)
以上