賢明な日本人

賢明な日本人
 (文藝春秋社) 1620円 最近、文春文庫にもなった 637円
賢明な日本人
 讀賣16年4月13日
賢明な日本人
 朝日16年4月13日 「オレが、オレが」の賢明ならざる経営者が、百数十年の歴史ある名門企業を傾けてしまった。
賢明な日本人
 香川県立図書館のハナミズキ
賢明な日本人
 高松サン・フラワー通りの街路樹はハナミズキ





 賢明な日本人


 宝永2(1705)年、徳川幕府は、権現様(家康)に認められた大坂の豪商・淀屋(5代目)を闕所(けっしょ:財産没収)処分にした。「商人に似合わぬ驕奢」が理由のようであった。淀屋が諸大名に貸し付けていた額は、現在価値にすると百兆円と言われている。隙あらばと狙われていたことは分かっていそうなものである。

 讀賣新聞4月13日お馴染み日本史家の磯田道史(みちふみ)さんのコラムを読んで、淀屋闕所の話を思い出した。仙台藩吉岡宿の穀田屋(こくだや)たちが生まれる少し前の話である。穀田屋たちは、武家に対して表立ってなめた真似をするとどういう目に遭うかは知っていたと思われる。それにしても、子々孫々まで己を殺して地域の繁栄を図るというのは、なかなか出来ることではない。

 該当コラムを抜粋してご紹介します。


 今も生きる「慎み」の教え


 5月14日から「殿、利息でござる!」という映画が全国松竹系で公開される。私の本『無私の日本人』(文春文庫)の中の一編を映画化したもの。この際だから、こぼれ話を書いておく。

 この話は東北仙台近郊の貧しい宿場町で起きた感動の実話がもと。映画化にいたる経緯は奇妙なものだった。
 5年ちょっと前、やはり私が著した『武士の家計簿』(新潮新書)が映画化された時の事。ある老人から便りをもらった。「磯田先生。自分の住む吉岡宿(宮城県大和町:たいわ)にすごい話がある。本に書いて映画にしてくれ」

 驚いたが文面は必死である。無視できず私は調べはじめた。「国恩記」という古文書があって感動実話の顛末が記されているらしい。仙台藩史料集『仙台叢書(そうしょ)』で活字化されている。東大農学部図書館に読みにいった。

 これが泣けた。映画は脚色しているので『無私の日本人』を読んで頂くしかないが、とにかく、浅野屋陣内穀田屋十三郎という人物が偉い。古文書を読んで大学図書館内でポロポロ涙が落ちたのに自分でも驚いた。「書かねば」と思った。月刊誌「文藝春秋」に連載を頼まれていたので、早速書き始めた。大きな反響があった。便りがいっぱい来た。

 一つだけ不思議に思った。立派な人物の話を書くと、大抵、子孫が手紙をよこして名乗り出てくる今回はそれが全くない。無名の庶民の話なので子孫を取材しないと、どうにも書き進められない。電話帳をめくり、宮城県大和町吉岡に「酒の穀田屋」という酒販店をみつけて電話をかけたらご子孫だという。

 取材に訪問した。穀田屋十三郎は三百年近く前に生まれた。仙台藩の重税にあえぐ宿場の民を救うため現在の価値で3億円の基金をつくって藩に貸し、年々藩から3000万円の利息をとって30万円ずつ約100軒の家に配り宿場を衰退から救う制度を作った。寒村だから基金3億円をつくるのが大変。穀田屋たち9人の商人が倒産覚悟で無償でお金を出し合った

 そんなことをすれば当然、町の英雄になる。ところが穀田屋たちは「慎み」の約束を結ぶ。金を出して宿場を救った自分たちは子々孫々の代まで上座に座らない。やったことを人前で自慢しない。道の端っこを歩くように町で暮らす、というのである。

 私は東北新幹線に乗り、酒の穀田屋にたどりついた。手製のデザートを出してくれた。思い切って聞いてみた。「あのう。子孫だと名乗り出られなかったのはご先祖の教えですか?」。穀田屋さんは温顔でコクリと、うなずいた


 私は感動したので、ふと立ち寄った京都の古書画商・山添天香堂の店先で「渋谷」と名乗る紳士にこの話をした。すると紳士が「娘が仙台の東日本放送にいる。先生の本を送りたい」といった。それから不思議な感動の連鎖がおきた。

 紳士は本当に娘さんに私の本を送った。読んだ娘さんも感動して泣き、同放送局の女性アナウンサーだった親友に本を渡したこの親友も読んで感動し、夫に「あなたこんな話を作品にしなきゃ」といった。なんと、その夫が映画監督の中村義洋さん本作はこうして映画になった


以上


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プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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