「アメリカは世界の警察官ではない」!?
毎日16年4月14日
欅(けやき)のミドリが日々濃くなっている。
欅に続きアキニレも葉をつけ出した。
「アメリカは世界の警察官ではない」!?
オバマ大統領が「アメリカは世界の警察官ではない」と言いだしたこともあり、世界情勢は以前にもまして複雑・混沌としてきた。もともとアメリカは孤立主義に陥りがちなところがある。財政は大赤字。近年、シェールオイル・ガスが自国で噴出するようになり、むしろ原油・天然ガスを輸出できるようにさえなってきた。安いエネルギー目当てに工場の国内回帰の動きもある。もともと農業大国でもある。孤立主義をとっても、アメリカ自身は以前より困らない。
われわれは、「アメリカは世界の警察官ではない」は、オバマ大統領ならではの主張だと思っているところがある。次期アメリカ大統領は、再び世界の警察官役を引き受けてくれるのではないかと期待している。しかし、共和党のトランプ氏は、日本が在日米軍の経費負担を大幅に増額しない限り米軍を撤退させ、アメリカは日本の核保有を含めた自主防衛を容認すべきだと主張している。欧州諸国との間も、不公平な北大西洋条約を見直すべきだとしている。
こうした主張は、トランプ氏と真逆の立場に立っている民主党のサンダース氏も似通っていると言われる。こうした孤立主義への回帰傾向は決して侮れないのではないか。もしアメリカが外交・安全保障政策を本気で変えるのならば、日本も外交・安保政策を根本的に見直す必要がでてくる。
それをうかがわせるコラムが毎日新聞4月14日「経済観測」欄に載っていた。政治アナリスト・横江 公美さんのコラムをご紹介します。
最大の解決策は経済制裁
7年ぶりに8冊目の単著「崩壊するアメリカ・トランプ大統領誕生で世界は発狂する!?」を先週、発刊した。
この本は私にとって、上級研究員として3年間務めた米ワシントンの(保守系)シンクタンク、ヘリテージ財団の卒業記念本という意味がある。
通常、シンクタンクは上級研究員に外国人をおくことはなく、とりわけ外交・安保に関わる情報からは遠ざける。だが、私は、幸運にも毎週の定例会議に出席し、内部のイントラネットへの接続も認められた。私はそこで、アメリカ政治の奥の院の情報に日々、触れてきた。
この本で伝えたかったことは、日本では見えないどころか、アメリカにいても外国人にはなかなか見えてこないアメリカの変化である。
最大の変化の一つは、日本が期待する「強いアメリカ」はもう存在していないということだ。
ヘリテージ財団は、レーガン大統領時代、衛星軌道上にミサイル衛星などを配備するスターウォーズ計画に貢献したが、ウクライナにロシアが侵攻した際に、直接攻撃を提案することはないし、イスラム国(IS)討伐のために地上軍を派遣すべきだとも提案していない。「アメリカが世界の警察官ではないことは明白だ」という言葉も、頻繁に会議で耳にした。
安保・外交の重点は、世界での役割を果たすことから国土安全保障へと移っていた。そのため、アメリカの外交・安保の最大の解決策は経済制裁に変化した。イアン・ブレマーが言う「経済の武器化」である。
アメリカは日米同盟の新分野として「宇宙」と「サイバー」を掲げた。この2つはまさに、今の時代の新しい「抑止力」なのである。外交・安保の議題は、経済、宇宙、サイバーという新しい時代に突入している。
以上