本当の「中国史」④

本当の「中国史」④
 文藝春秋SPECIAL 2016年夏号
本当の「中国史」④
 朝日新聞16年6月16日号
 中国は世界各地でこのようなことをして嫌われ者になっている。
本当の「中国史」④
 岡田英弘さんの著作集(藤原書店) あと1巻で完結。
本当の「中国史」④
 左4冊宮脇淳子さんの本(朝鮮史は倉山満さんとの共著)
本当の「中国史」④
 ヤモリが出てきだした。窓を閉めるとき気をつけないと挟んでしまう。
本当の「中国史」④
 高松市檀紙町の田んぼ。次の土・日に田植えか?





 本当の「中国史」④


 続きです。


 漢末の内戦で「漢人」は滅びた


岡田 実際の歴史の流れに沿って、話を進めましょう。

 の始皇帝による統一を受け継いだですが、後漢の末にシナに大変動が起こります。ここでのキーワードは「人口減」です。

 184年に起きた黄巾(こうきん)の乱を契機に、後漢の中央政府は事実上消滅する。この結果、華北の平野部は「千里人煙を絶ち、白骨が草木の下に散らばる」といったありさまになります。それまで5千万人台だった人口が4百万人台と、10分の1以下に激減。ここで古代からの「漢人」は事実上の絶滅を迎えたといっていい。

 その人跡疎らとなった華北平原の空白地帯に、北アジアから移り住んできたのが、アルタイ系の諸族でした。シナの構成メンバーが一変したのです。

宮脇 それがちょうど『三国志』の描く世界ですね。

岡田 秦による統一にはじまり、隋の再統一までの歴史は、漢人からアルタイ諸族に主人公が移っていく歴史です。589年、北朝の一国であった隋が再統一を果たす。この鮮卑族の国ですから、シナは完全にアルタイ化してしまうわけです。ここで秦・漢に始まる第二期が終わり、第三期が始まります


 元が編んだ3つの「正史」


岡田 隋・唐から元の成立までの第三期は、アルタイ系の諸族が新しい「漢人」となり、契丹(きったん)、女真(じょしん)、モンゴルといった新たな北方の遊牧民や狩猟民の挑戦を受ける時代です。

 隋・唐ともに鮮卑人のつくった王朝です。科挙を始めたのは隋の時代です。それは何故か?旧い「漢人」が激減して、アルタイ系の人々が増えたため、漢字の使い方を再統一する必要があったからです。

 ことに混乱していたのは発音でした。601年に、鮮卑人の陸法言(りく・ほうげん)が漢字の標準的な発音を記した『切韻(せついん)』という辞典をつくります。なぜそんな本をつくらなければならなかったのかと言えば、それまでの漢人が絶滅して、旧来の漢字の発音が混乱していたり、わからなくなっていたからなんですね。『切韻』の発音は人工的な音で、その構造はアルタイ的です。ここで「漢字」もリニューアルされたわけです。

宮脇 その影響は文学にも及んでいますね。詩人の李白はテュルク系といわれ、杜甫の詩にもアルタイ系の言語的特徴がみられます。

岡田 3百年つづいたのあとは、五代十国時代。そして五代最後の王朝、後周(こうしゅう)を引き継いだに対して、遼・金・元と、北方から新たに遊牧民、狩猟民がやってきます。

 北宋の人々も、もとはといえば、古く入植した北方種族の子孫です。ところが、契丹に攻め込まれるうちに、自分たちは「正統」の「中華」だ、「漢人」だと言い出し、契丹などを「夷狄(いてき)」とさげすんで、傷ついた自尊心をなぐさめるようになりますこの負け惜しみの思想が「中華思想」なのです。


岡田 この時代の「中華思想」がはっきりあらわれるのが歴史記述です。1064年から20年近くかけて、北宋の宰相、司馬光が編纂したのが『資治通鑑(しじつがん)という歴史書

 たとえば南北朝時代をみると、漢人の建てた南朝のみの年号が記されているばかりか、北朝の皇帝は「魏主」「済主」「周主」と呼び、皇帝と呼ばない。つまり、北方民族の王朝を正統とは認めないわけです。

 しかし、同じ鮮卑系の隋・唐は大きすぎて認めざるを得ない。その結果、非常にアクロバティックで現実を無視した歴史記述になってしまっている。しかし、この『資治通鑑』が以後のシナの史学からは高く評価され、大きな影響を与えてきたのです。

宮脇 面白いのは、元は、『遼史』『金史』『宋史』と3つの正史を編纂するのです。正統は一つしかないという漢族のドグマには従わなかった。モンゴル族からすると、中央アジアには契丹(遼)→金→モンゴルと続く独自の正統があるのだと、ここで示したのです。この時代のキーワードは「中華思想」ですね。あるいは、もっとはっきりと「漢人の負け惜しみ」としましょうか(笑)。


つづく


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プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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