英分断統治の残滓②-印パ、ビルマ

英分断統治の残滓②-印パ、ビルマ
 週刊新潮16年5月26日号
英分断統治の残滓②-印パ、ビルマ
 アウンサンスーチー顧問
英分断統治の残滓②-印パ、ビルマ





 英分断統治の残滓②-印パ、ビルマ


 英国人ほど現実的で巧妙かつ狡猾な国民はいない。だからこそあの小さな島国が、少ない人数で、世界の4分の1を植民地支配できた。

 表では民主主義とか法の支配とか聞こえのいいことばかり言っているが、裏では2枚舌・3枚舌を使い、分断統治(分割統治)で対立を煽り、自分は高みの見物。利益だけはがっちり確保。都合が悪くなれば謀略を仕掛け、007ばりに暗殺も厭わない。それでいて国際的なイメージは悪くない。真面目な話、日本人も半分くらい見倣うべきところがある。


 週刊新潮5月26日号お馴染み高山正之さんの「変見自在」にその一端が窺える。抜粋してご紹介します。


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 スーチーの初仕事


 昨年の暮れ。インドの首相モディはアフガンの公式訪問を終えたあと、その日がパキスタンの首相ナワズ・シャリフの誕生日だったことを思い出した。

 彼は帰途、電話した。誕生日おめでとう。シャリフはありがとうと答えた。今はその祝いのために故郷のラホールにいるのだと。
 私はその辺を飛んでいる。立ち寄ってもいいかと聞き、シャリフは喜んで歓迎すると返事した。

 周りはびっくりした。インドとパキスタンは戦後それぞれが信ずる宗教で国を割り、その憎悪は今も分断されたパンジャブ、カシミールを舞台に辛辣に殺し合いを続けている
 核までもって睨み合う両国の首脳が唐突に会う。

 モディはラホール空港に降り立ち、出迎えのシャリフと固い握手を交わした。


 両国がもう半世紀、憎み合ってきた元は英国の分割統治にある。ヒンズーとイスラムを対立させ、人種でも言語でもあらゆる違いを強調した統治が行われた。
 ために4億の民は身内で争い合い、たった2000人の英国人に支配された

 戦後、独立するときも英国はイスラムとヒンズーの国に分断したうえ、両国間にあやふやな境界線を引き、両国が争い続けるよう仕組んでいった

 その英国の意を体したのがネルーだった。彼は独立後も英語を公用語に据え、人種の壁もカースト制も排除するどころかむしろ強化温存した。パキスタンとの対立も煽った。

 宗教民族抗争は英植民地時代より激化した。ネルーの後継者の娘インディラはシーク教徒に殺され、孫ラジブはタミール女のテロで死んだ。


 そんな植民地統治の継続はやめると言って出てきたのがモディだった。
 彼は単純にインドはもともとヒンズーの国だから公用語も役所の文書も英語でなくヒンズー語に戻せと言った。カーストも緩めろと言った。英国が置いていった仕来(しきた)りを今は次々潰していっている。


 この会談があって間もなく、インドとパキスタンから同時に飛び出したのが英女王の王冠を飾る20グラムのダイヤ「コイヌール(光の山)」の返還要求だ。

 このダイヤはもともとパンジャブ藩王のモノだったが、19世紀、英軍が戦争を吹っかけて11歳の藩王から奪い取ったものだ。
 ビクトリア女王は37グラムあったのを半分にカットさせて王冠にのっけた。

 今のパキスタンはパンジャブの半分を領有しているから、このダイヤは「植民地からの簒奪品だ」と主張して返還訴訟を起こした。
 インド側は政府がまあまあとか言いながら政府系の新聞がインドに返せと書き立てている。

 英国側は英王室の権威の象徴である王冠にごたごた言われたくないが、放っておけば植民地で犯した数々の旧悪の暴露に繋がりかねない。今は必死に宥(なだ)めに回っている。

 このモディの道には実はモデルがある。アウンサンのビルマ(ミャンマー)だ。
 彼らは戦後、旧英領植民地としては異例なことに英連邦入りを拒否し、公用語の英語を廃し、左側通行までやめてしまった

 そして国連を通して英国が奪っていったビルマ国王の玉座と国宝の返還を求めた。つまり英植民地支配を告発した。

 困った米英が主導して「ビルマは軍事政権」とか言って経済制裁を科し、スーチー(アウン・サン将軍の娘。英オックスフォードに学ぶ。夫は英国人)を送り込んでビルマの口を封じてしまった。

 いま、国家顧問に就いたスーチーは英連邦に加盟しかねないほどの偏りを見せるが、それはいかがか。

 植民地支配の告発を再開することが父の思いに適い、アジアの歴史を糺(ただ)すとてもいい初仕事になる


以上

 

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プロフィール

teccyan88

Author:teccyan88
団塊の世代(♂)。うどん県高松市生まれ。大学は京都。20数年の会社員生活(四国各地・東京・広島・福岡勤務、主として経営管理・企画畑を歩む)の後、早期退職しUターン。専門学校(3年)ののち自営業。
趣味:読書、水泳、水中ウォーキング。
尊敬する人(敬称略):空海、緒方洪庵、勝海舟、大久保利通、司馬遼太郎、盛田昭夫、小倉昌男、佐々木常夫、西原理恵子ほか多数。

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