EUは理念先行し過ぎた
朝日新聞16年7月29日
夏休みで香東川河川敷では若者が野球やサッカーに興じていた。左端の緑のテントは見守るお母さんたち用。
マックは避暑客でほぼ満席。その内7割は勉強する若者たち。
EUは理念先行し過ぎた
共産主義の大実験は、この百年で、1億人以上の死者と無残な経済状況を残してほぼ潰えた。EU(欧州連合)という大実験もこのままでは崩壊しそうな雲行きである。あまりにも理念先行で急ぎ過ぎた。
朝日新聞7月29日、阪大特任教授の小野善康さんのコラム「ミダス王の誘惑」が上手く説明している。抜粋してご紹介します。
EU維持 ドイツの覚悟は
欧州連合(EU)の盟主ドイツは、英国のEU離脱の決定が他の加盟国にも波及することを懸念している。実は、英国よりも他の加盟国の方が深刻な問題を抱えている。英国はポンドを維持してユーロとの為替レートを調整できるが、多くの国は、同じユーロなので調整できないからだ。
たとえば、経済危機にあるギリシャの通貨が、以前のままドラクマであったとすると、ドラクマの価値は大きく下がったはずだ。結果、ギリシャ製品の国際価格は下がり、競争力を回復して雇用は改善する。だが、実際はユーロなので、為替の調整ができず、深刻な状況が続いている。
為替レートの調整ができなくても、各国が独自に金融政策や財政政策を実施できれば、それぞれの景気を支えることができる。しかし、金融政策は欧州中央銀行(ECB)によって管理されているため、各国は勝手に金融緩和できない。
財政政策の自由も制限される。各国は厳しい財政規律が求められている。
そのため、各国は不況対策が打てず、地域間格差は長期化する。実際、ドイツが好況を維持する一方で、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドなどの経済状況は深刻である。
景気の格差が域内で定着すれば、景気の悪い国ではEUへの不満が募って、離脱の声が高まる。EUではそれを緩和するために、仕事を求めて域内を自由に移動することが保障されている。
また、労働が移動しないまま景気の格差を縮小するためには、不況の深刻な国の財政支出を認める必要がある。しかし、財政赤字が拡大する恐れがあるため、景気のよい国が資金援助をするしかない。
だが、EUには、そのような支援制度が十分ではない。実際、ギリシャ危機に直面して作られた支援策も補助金ではなく、融資であり、返済しなければならない。また、財政赤字についても厳しい制限がくわえられた。そのため、ギリシャは充分な財政政策ができず、いまだに苦しんでいる。
同様の問題は、中国も抱える。農村と沿岸地域の経済格差が広がり、多くの人々が農村から流入している。そのため、戸籍制度によって都会への労働流入を制限している。農村出身者の多くは満足な社会保障を受けられず、格差問題が起こっている。
日本もひとごとではない。
このように、EUが共通通貨を維持するには、労働移動の自由と加盟国間の財政支援は避けられない。EUの維持は、これらの負担をドイツがどれだけ背負う覚悟があるかにかかっている。
以上