複式簿記を学び直そう
毎日新聞12年4月28日「経済観測」欄、大塚ホールディングス副会長・元国税庁長官の大武 健一郎さんのコラムをご紹介します。
(タイトル)
複式簿記を学び直そう
(本文抜粋)
複式簿記こそ、欧米が発展した基礎。複式簿記はイタリアの商人が14世紀に発明し、1494年イタリアの僧侶であり幾何学者であったルカ・パチオリが教科書としてまとめたことから欧州中に広がった。
17世紀に入り、フランスのルイ14世が、経済を立て直そうと、当時横行していた偽装倒産を防ぐための法律を作った。そこには「会社が倒産した時、複式簿記の帳簿を裁判所に提出できない経営者は死刑に処す」とあった。この法律に基づき多数の経営者が処刑されたという。
その効果もあり、フランスでは商取引の信頼が回復し、経済は立ち直った。この法律は欧州各国に広がっていった。
しかし、アジアでは複式簿記は普及しなかった。江戸末期になって福沢諭吉が米国の商業高校の教科書を読んで驚き、「学問のすすめ」の後にこの教科書を翻訳した。それが「帳合之法(ちょうあいのほう)」だが、これが契機となり日本では明治期以後、少しずつ普及していった。アジア各国で普及したのは20世紀後半からであった。
欧米では複式簿記によって、産業技術が庶民の間に伝承され、産業革命が起こった。そして資本主義の時代になっていった。ドイツのゲーテが語っている。「欧州が生んだ最大の発明の1つが複式簿記だ」と。
日本では商業高校から普通高校への転換が進み、複式簿記の授業が行われなくなっている。複式簿記を学び直す必要がある。
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(感想・意見など)
私は高校は普通科、大学は社会学部だったので簿記とは無縁だった。会社に入って3年ほどしたころ当時の部長から「もう君は今の仕事は卒業だ。次は経理をやれ」といわれ、驚いた。身近に教えてくれる人とてなく、簿記に関する本を何冊か買いこんで独学で学んだ。仕事は仕事で忙しく大変であった。
いまの世の中を理解するにあたって、複式簿記の考え方は不可欠であると思う。今では感謝している。そういうムリヘンにゲンコツのようなことがなければ、生涯簿記とは無縁だったと思える。
大学の授業で学び今もこころしていることと言えば、「存在(である)と当為(べき)の峻別」ということである。社会科学概論の授業であったか。
どういう訳か独学したことがその後の仕事に役立ったように思う。何を思ってか、「経済学」と「民法」をコツコツ学んだ。
経済学は、当時流行っていたサミュエルソンの「経済学」上・下を1年かかって独学した。また、日本経済新聞の「経済教室」なども精読した。
民法は、我妻栄先生の本でコツコツ学んだ。あまり面白くなかったが、その後「法律学の正体」「裁判の秘密」「裁判のカラクリ」 山口宏さん・副島隆彦さん共著を読んでから俄然面白くなった。
若い時に一生懸命勉強したことはその後のバックボーンになる。その中でも、あえて言うが、複式簿記の考え方は現代を理解するうえで必須である。
以上
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まとめtyaiました【複式簿記を学び直そう】
毎日新聞12年4月28日「経済観測」欄、大塚ホールディングス副会長・元国税庁長官の大武 健一郎さんのコラムをご紹介します。(タイトル)複式簿記を学び直そう(本文抜粋)...